匂わせちゃう系男子。3 ページ3
「ちょっと散らかってるけどごめんね」
食事を終え、彼のマンションに到着した私達。
ガチャリと玄関ドアを開けてくれた彼が、中へと招き入れてくれた。
お邪魔します、と小さく呟きながら足を踏み入れると、途端にふわりと漂ってくる彼の匂いに酔いしれる。
私が肺いっぱいにその空気を吸い込もうと「どうかした?」という彼の声。
『伊沢さんのお宅、伊沢さんの匂いがするので大好きなんです』
目を細めながら思ったことを正直に口にしたが、我ながら少し変態くさいなと反省した。
ところが彼にとっては、それが嬉しかったようで。
「入って3秒でそういう可愛いこと言うのは駄目だよ!」
と説得力の欠片もないほどニヤニヤしながら声を荒げるのだった。
リビングにお泊まりバッグを置かせてもらい、ソファに座ってホッと一息。
キョロキョロをあたりを見回したが、やはり何度お邪魔しても未だに彼の部屋にいるという実感が湧かないなぁと思いながら苦笑いする。
そうこうしている間に、彼は2つのマグカップを持ってこちらにやって来た。
「お茶でよかったかな」
『はい、ありがとうございます』
私がお礼を述べながらマグカップを受け取ると、彼はそのまま私の隣に腰掛けた。
ち、近い。
私の右半身は彼の左半身とぴったりくっついている。
急激に上昇する心拍数を感じながら、私はなんとか落ち着きを保とうと無心になろうとした。
すると。
「Aちゃん」
『ハイッ!?』
唐突に彼から名前を呼ばれ、素っ頓狂な声を上げる私。
それはさすがに不審すぎる…。
緊張していることがバレてしまったのではないかと恥ずかしくなったが、そんな私の思いなど彼は何ら気にする様子もなく、真剣な目で私をジッと見つめてきた。
私の心拍数はただいま推定140。
これは1秒間に約2.3回ほど脈打っているということで、日常生活においてこんなに心臓がドキドキすることはほとんどない。
次に彼がどんな動きをするのかまったく予想ができず、思わず私はギュッと固く目を瞑る。
頬に手を添えられるのかな。
それとも抱きしめられるのかな。
頭を撫でられるのもあるかも。
とぐるぐる思考を巡らせていると、彼の一言により私の予想はすべて外れてしまったことを知った。
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作者名:Annie | 作者ホームページ:https://twitter.com/kmu_annie?s=09
作成日時:2020年9月16日 20時