0.02mmの片想い。8 ページ8
「…お互い、勘違いしてたんだな」
私の涙を指先で拭いながら、彼がふっと微笑んだ。
「すごい遠回りしたけど、やっと言える。俺はAが好きだよ」
これは夢じゃないのだろうか。
シンデレラのように、一夜限りの夢。
明日の朝を迎えれば、またいつも通りの毎日が待っているとしか思えない。
こんなハッピーエンドが私に訪れるはずがないのだ。
しかし、しゃくり上げながら泣くばかりの私を、彼は優しく抱きしめてくれて。
そのぬくもりが、これが夢ではないということを教えてくれたのだった。
声を詰まらせながらも、なんとか『私も』と伝えることができた私に、彼はそっと唇を寄せた。
想いを通じ合わせた相手とするキスは、こんなに幸せなものだということを初めて知った。
ゆっくりと唇を離した彼に、私は消え入りそうな声でこう尋ねる。
『私、拓哉の彼女になってもいいの？』
ずっとずっと願い続けた夢。
あなたの側にいたい。
大切なあなたの、大切な人になりたい。
それが今、叶おうとしている。
せっかく彼が拭ってくれた涙も、もう止まることを知らない。
ぼやける視界で彼を見上げると、彼は一瞬だけ目をぱちくりさせてすぐに柔らかく微笑んでくれた。
そして、私の頬にそっと手を添えて、
「Aじゃなきゃ嫌だよ。他の誰でもなく、Aがいいの」
と優しい声で伝えてくれたのだった。
その言葉に、私の涙腺は完全に壊されてしまった。
ひたすら泣き続ける私を、彼は黙って抱きしめてくれる。
彼はこんなに温かいぬくもりを持った人だったのか。
数年間肌を合わせてきたというのに、今更知るなんて。
この日私は、初めて彼と関係を持った日ぶりに彼と朝を迎えた。
ただ、一つだけあの日と違っていたのは、彼が一晩中腕枕をしていてくれたということ。
目が覚めると彼の綺麗な寝顔が目の前にあって。
その幸福感から、私はまた彼を起こさないように声を押し殺して少し泣いてしまったのだった。
紆余曲折を経て、私は彼の彼女に昇格した。
死ぬほど苦しい思いも、切ない思いも、もう一生分味わった。
これからはきっと、もう彼から離れることはないのだろう。
正式に彼の隣にいることが許されたので、彼から嫌な顔をされるまで隣に居続けることにする。
だからどうか、鬱陶しそうな顔をしないで、「しょうがないなぁ」って笑ってね。
続く (更新停止中)
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Annie(プロフ) - 217さん» わー！217さんお久しぶりです、コメントありがとうございます！！騙されていただけて良かったです(？)きっと彼と幸せになるには、物凄い遠回りで長い道のりを行かなければならないんだろうなと、色々考えながら書きました。そう言っていただけて嬉しいです(; ;) (2020年9月14日 8時) (
レス) id: 8c53967ba8 (このIDを非表示/違反報告)
217(プロフ) - Annieさんこんばんは。登録者記念の時に、彼のお話について仰っていたのを思い出し驚きましたが、とても楽しませてもらいました…！主人公視点だったので、最後まで騙されていました笑 Annieさんの書くk.wm/rさん最高でした。ありがとうございました（ ; ; ） (2020年9月13日 18時) (レス) id: 45bc699ba3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Annie
| 作者ホームページ：https://twitter.com/kmu_annie?s=09
作成日時：2020年9月13日 13時
