0.02mmの片想い。5 ページ5
「初めてした時のこと、覚えてる？」
数年前の、あの飲み会の日。
アルコールに溺れて記憶を無くした日。
すべてが始まった日。
『覚えてないよ。酔っ払ってたもん。気づいたら裸で拓哉の隣にいたの』
残念ながら、初めての記憶はない。
私があの日酔っ払わずにいれば、運命は変わっていたかもしれないのに。
「なんでそうなったかも覚えてない？」
再びの彼の問いに、私は黙って頷いた。
だが、予想はできた。
私がその場の勢いで、彼に想いを伝えてしまったということは。
そして訪れる数分間の沈黙。
何のための沈黙なのかも分からず、私は目尻の涙を拭いながら彼を見つめる。
彼はフリーズしていた。
ピクリとも動かず、瞬きをすることもなく、おそらくそれは思考を巡らせているようだった。
もしかして、必死に私を振るための台詞を考えているのだろうか。
私を傷つけないような、ものの言い方を。
そうか、そんなところは優しいのか。
諦めを含んだ笑みを浮かべながら、私は再び目に涙を滲ませた。
この次に彼が口にするのは、私を拒絶する言葉だ。
まさか、同じ相手に2度も振られることになるなんて。
覚悟を決めようにも、心がざわついてまったく落ち着く素振りも見せない。
ゴクリと生唾を飲み込みながら、私は彼の言葉をひたすら待ち続けることしかできなかった。
すると、彼は盛大なため息をつきながら頭を抱え始めた。
「はぁ…。俺達のこの数年間はなんだったんだ？不毛すぎるだろ」
まったく予想していなかったその台詞に、私は思わず面食らってしまった。
『…どういうこと？』
不毛？一体何が？
今度は私が彼を問いただす番だった。
私に問われた彼は、ゴホンと一つ咳払いをして、まっすぐに私の目を見つめた。
「えーと、結論から言わせてもらうと、俺もAが好き」
『…え？』
その瞬間、私の中の時が止まった。
好き？彼が？私を？
なんで、とかいつから、とか聞きたいことはいくらでもあったのに、混乱のあまり何一つそれらを口にすることはできなかった。
そんな私に、彼はさらなる追撃をする。
「ていうか多分、好きになったの俺の方が先だと思う」
『ええ！？』
飛び上がるほど驚いた私と、気まずそうに俯く彼は対照的で。
少しだけ顔を赤くしながらこちらを1度だけチラリと見遣る彼が、可愛らしくてたまらなかった。
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Annie(プロフ) - 217さん» わー！217さんお久しぶりです、コメントありがとうございます！！騙されていただけて良かったです(？)きっと彼と幸せになるには、物凄い遠回りで長い道のりを行かなければならないんだろうなと、色々考えながら書きました。そう言っていただけて嬉しいです(; ;) (2020年9月14日 8時) (
レス) id: 8c53967ba8 (このIDを非表示/違反報告)
217(プロフ) - Annieさんこんばんは。登録者記念の時に、彼のお話について仰っていたのを思い出し驚きましたが、とても楽しませてもらいました…！主人公視点だったので、最後まで騙されていました笑 Annieさんの書くk.wm/rさん最高でした。ありがとうございました（ ; ; ） (2020年9月13日 18時) (レス) id: 45bc699ba3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Annie
| 作者ホームページ：https://twitter.com/kmu_annie?s=09
作成日時：2020年9月13日 13時
