夢の中の2つの扉【QK】 (ページ10)

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夢の中の2つの扉10 ページ10

もう何度目になるだろう。
この扉の前に立つのは。

相も変わらず、俺は赤い扉のドアノブに手をかける。

だが、なんだかそれを開く気が湧かなくて。

薔薇色のような彼女との毎日。
俺がちょっかいをかけても、馬鹿なことを言っても、全部笑顔で受け入れてくれる彼女。

それは果たして本当の彼女と言えるのだろうか？

確かにいつも笑顔でいてくれたり、皆が凍りつくような俺の馬鹿な冗談を面白がってくれたりするのは、理想的とも言えるのだろう。

だが、最後に彼女の頬を膨らませた可愛い顔を見たのはいつだ？
俺が作業中の彼女にちょっかいをかけて、少し怒りながらも“しょうがないなぁ”と呆れ顔を見せてくれたのは？

以前の彼女なら、仕事のやる気が起きない俺に“仕事してください”とぴしゃりとお尻を叩いてくれて。
それに何度救われたことだろう。

今の彼女は、ただひたすらに俺を甘やかしてくれるし、甘えてくれる。
本当にそれでいいのだろうか？

夢の中ながら、俺はぐるぐると思考を巡らせる。

目の前に立ちはだかる2つの扉を、俺はこの日開けることはなかった。

ツンデレとか甘えん坊とか、そのような枠組みで人を好きになるわけではない。
人に厳しく自分にも厳しく、時にツンなところも甘えてくれるところもある彼女が好きだ。

朝、目を覚ました俺は妙に達観していた。

例え今日彼女がツンデレでも甘えん坊でも、以前の彼女でもいい。
どんな彼女でも愛してる。

だが、もしほんの少し願うのを許されるのならば、どうか以前の彼女でありますように。

そんな思いを胸に、俺はオフィスへと向かった。