夢の中の2つの扉【QK】 (ページ5)

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夢の中の2つの扉5 ページ5

収録も無事に終わり、帰宅した俺はササッとシャワーを浴びてベッドへと寝転んだ。

スマホをいじりながらボーッとしていると、ふいに襲いかかってくる眠気にウトウト。

そのまま力尽きた俺は、睡魔に抗うこともなく目を瞑り夢の世界へと落ちていった。

あれ、デジャヴか？というくらい、昨日とまったく同じ光景。

だだっ広い真っ白な空間に、ぽつんと現れる2つの扉。

青いものと、赤いもの。

それぞれツンデレと甘えん坊という白い文字が書かれており、何もかもが昨日の夢と同じだった。

また？

一瞬だけ迷ったが、今回は赤い扉を開くことにした。

甘えん坊という白い文字で書かれたそのドアノブに手をかけ、ゆっくりと開ける。

昨日と同じく、ドアの隙間から光が漏れ出し、俺はまたハッと目を覚ますのだった。

「同じ夢か…」

よく毎日同じ悪夢を見るという話を聞くことがあるが、俺は生まれてこの方同じ夢を見たことはなかった。

普通の夢とは明らかに違うということだけは分かっていて、もしかしたら今後同じ夢を見続けるのかもしれないという気さえした。

とりあえずいつものように出かける準備をして、オフィスに向かう。

だが、その間にも俺はずっと夢のことを考えていた。
ツンデレと甘えん坊って、どういうことだ？
そのうちドアが増えたりすることもあるのか？

考えれば考えるほど、謎が深まっていく。
謎解きは大好物だが、答えがないことに対していつまでも考えていても仕方がない。

俺は気持ちを切り替えて、到着したオフィスのドアをガチャリ、と開けた。

『あっ伊沢さん！』

中へと足を踏み入れた瞬間、ふとそんな黄色い声が聞こえてきて。

疑問に思う間もなく、俺は誰かに抱きつかれたのを感じ取った。

慌ててその主に目を向ければ、それは紛れもなく可愛い俺の彼女だった。

ただ、彼女から抱きついてくれることなど、これまでの付き合いの中で数えるほどしかなくて。

しかも、2人きりの甘いムードの時ならいざ知らず、こんな風に無条件で抱きつくということなど皆無だったというのに。

俺は格好悪いことに、着いた早々胸を高鳴らせてしまった。

普段自分から彼女を抱きしめることは日常茶飯事だが、これはさすがに貴重すぎる。

おそるおそる彼女をギュッと抱きしめ返せば、彼女もさらに俺の背中に回した腕に力を入れてくれる。

何だ？何のご褒美だこれは？