夢の中の2つの扉【QK】 (ページ4)

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夢の中の2つの扉4 ページ4

その後も各々が黙々と作業を続ける中、ふと河村さんが彼女に声をかけていて。

彼の手には紅茶の缶が握られており、どうやらそれを彼女にプレゼントしているようだった。

あの2人はQuizKnockの中でも紅茶好きで有名で、よくおすすめの茶葉の話をしているのを聞くことがある。

おそらく今彼が彼女に手渡しているそれも、彼のおすすめのものに違いない。

嬉しそうな顔をしている彼女を見て、彼女の笑顔が俺以外の男に笑顔を向けられていることに胸が痛んだが、あまり口を出すのも心が狭いと思われてしまうだろう。

俺は嫉妬心をぐっと堪え、黙ってその光景を見守ることにした。

彼女は早速缶の蓋を開けて茶葉の香りを嗅ごうとしたのだが、どうやらそれが固すぎてまったく開かないらしい。

それを渡した本人も、

「ごめん、開けてあげたいけど役に立てる自信がない」

とオロオロ。
確かに普段から非力アピールをしている彼が、勇ましく固い蓋を開けているさまを想像できなかった。

これは自分の出番だなと思い、俺はゆっくりと席を立ち彼らの方へ向かった。

彼女から紅茶の缶をひょいと奪い、パカッとそれを開けてみせる。

「はい、開いたよ」

微笑みながらそれを渡せば、さすがにご機嫌ナナメな彼女も笑顔を見せてくれるだろう。

そう思っていたのに。

『…別に伊沢さんのお力を借りずとも、私一人で開けられましたが？』

と、彼女はふいっとそっぽを向いてしまった。

本日2回目のショックすぎて硬直する俺。

隣の河村さんはそんな俺らを見て再びオロオロ。

今日はやけに彼女が冷たいなぁと思いながら時計を見上げると、そろそろ出なければならない時間に。

「じゃあ、そろそろ収録行くんで」

と、その場にいるメンバーに声をかけながら荷物を持つ。

皆が口々にお疲れとか頑張れとか声をかけてくれる中、ふと彼女がこちらへ駆け寄ってきて。

何か俺に確認してほしいことがあるのかと思いながら彼女に目を向けると、

『いってらっしゃい。頑張ってくださいね』

とはにかんでくれたのだった。

今日初めて彼女から優しくされた俺は、その天使のような微笑みにKO寸前。

それはずるいって…。

なんとか一命を取り留めた俺は、彼女の頭をくしゃりと撫でながら「ありがとう」と冷静に声をかけた。

嬉しそうに笑う彼女に、また胸が締め付けられるようだった。