今日の二人【QK】 (ページ38)

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髪を乾かしているだけだったのだが、端から見ればイチャイチャしているように見えてしまっていたのかと、私は眉を下げてオロオロ。

ところが目の前の山本くんは、

「僕もかぶったんだからいいでしょ！」

と強く反論し始めた。

「なんでもっと暑い時期にやらなかったんだよ！！」

須貝さんも負けじと声を荒げる。

「どうせ室内はクーラーが効いてるんだから、夏にやっても変わんないし！」

ドライヤーの音を遥かに上回る声量でやり取りをする彼らを、情けなくも私は見守ることしかできない。

だが、よく見れば2人ともどことなく楽しそうな顔をしていて。

室内で水を浴びるという非日常的な出来事に、興奮している様子だった。

よく伊沢さんとふくらさんの許可が出たなぁと思いながら、私はぼんやりとビニールが張り巡らされた室内を見渡す。

彼の髪が乾いたのを確認し、ドライヤーのスイッチを切った。

それでもまだ、彼は濡れた服を身に着けたまま。

未だ寒そうに小刻みに震える彼を見て、私はキッチンへと駆け出した。

「う〜…風邪引きそう…」

撮影部屋からは彼の弱々しい声が聞こえてくる。

サッとケトルに水を入れ、スイッチを押した私は、手早く彼のマグカップにお茶のティーパックを入れた。

すぐにお湯が沸き用意したマグカップに中身を注ぐと、十分に茶葉が開くのを待たないまま私はそれを取り出し、作業部屋へと戻る。

『お茶持ってきたよ！』

彼はバスタオルをまといながら、スマホのバイブレーションのように震えていた。

そのさまがあまりにも不憫で、今この瞬間だけ彼と代わってあげたいと強く思わされる。

「ありがとう…」

彼はそっと私からマグカップを受け取り、ズズ、と熱々のお茶を少しだけ啜った。

ほう、と息をつき彼に、

『風邪引かないでね』

と心配そうに声をかける。

少し離れたところから

「Aちゃん、俺には！？」

という須貝さんの声が聞こえてきたが、目の前の彼にすべての意識を奪われた私の耳にはその声が届かなかった。

「風邪引いたら看病してくれる？」

コツン、と額を私の額にくっつかせながら、彼は甘えるような口調でそれを尋ねてきた。

ち、近い。

『もちろん。でも引かないのが一番だからね』

胸のときめきを隠しながらそう告げると、彼はへへ、と嬉しそうに笑ってみせた。

その人懐こい笑顔が愛しくて、私はときめく胸がより一層跳ねるのを感じた。

「Aちゃん、俺のお茶！」