今日の二人【QK】 (ページ31)

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「おっす」

いつものようにオフィスにやって来た彼。

『お疲れ様です』

私が彼に挨拶を返すと、彼は私の頭を撫でてから自分の席に。

ここまではいつもと変わらない。

ジーッと彼の行動の一挙手一投足を見つめていると、PCの電源をつけて少し作業をして。
飲み物を飲んで。また作業して。

と、特に目立ったことはしていない。

あれ、と首を傾げると。

ついに彼は荷物からハンドクリームを取り出した。

来た！と目を見開きながらそのさまを凝視する私。

彼はハンドクリームをこれでもか！というくらいブニューっと手に出したかと思うと、ふと席を立ち、ニコニコしながらこちらへとやって来たのだった。

やっぱり、わざと出し過ぎてる。

疑惑が確信に変わったところで、私の手にクリームを塗る彼に、声をかけてみた。

『あの、伊沢さん』

「ん？」

彼は私の手に愛おしむかのように触れている。
いや、嬉しい。嬉しいのだが。

『なんでわざと毎回クリームを出しすぎてるんですか？』

私がそれを尋ねると、彼はすぐに表情を曇らせた。

「え。分からないの？」

少しだけ悲しそうな様子の彼に、私の謎はますます深まるばかり。

『だって、そんなに毎回出し過ぎてたらすぐ終わっちゃって勿体無いですよ。ほとんど私に塗ってくださってるじゃないですか』

彼が自分のために買ったものだろうに、これではどちらのハンドクリームか分かったものではない。

乾燥肌な私を気遣ってくれているのかもしれないが、私も自分のものを用意しているので気にしないでほしいという思いを込めて、それを告げた。

だが、彼ははぁと深いため息をついてしまって。

なぜなのかと疑問に思っている私の手をギュッと握り、彼はまっすぐに私の瞳を見つめた。