今日の二人【QK】 (ページ23)

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伊沢さんと喧嘩した話。ページ23

それは、唐突に始まった。

「Aちゃんは俺以外の男を格好良いって言っちゃいけません！」

出た。口うるさいCEOのお小言。

皆で過去動画を観ている時、ポロッと出てしまった須貝さんに向けての格好良いという言葉。

それを聞いた彼が、目をひん剥きながら鬼の形相をしている。

一緒に観ていた皆も「また始まった」と呆れ顔。
もはや関わるまい、という様子で再び画面に目をやっていた。

私もそうしたかったが、まさか無視を決め込むわけにもいかず。
仕方なくそれに返答をした。

『伊沢さんが1番なんだから、別にいいじゃないですか』

私が辟易しながらそう言うと、彼はさらに目をカッと見開き、

「オンリーワンでナンバーワンじゃなきゃ嫌だ！」

と喚き始める。

心の内に秘めておこうと思っていた“めんどくさい”は、うっかり私の口からこぼれ出てしまった。

「俺以外の男と仲良くするのもダメ！さっきも山本と仲良さそうにしてたけど！」

すっかりわがままモードに入ってしまった彼は、次々と束縛の言葉を並べ立てる。

私も思わずカッとなってしまって、

『勉強を教えてもらってただけです！』

と声を荒げて潔白を証明しようとした。

彼もどんどんヒートアップしていき、

「そんなの俺が教えるよ！」

と私の肩を強い力で掴んだ。

『だって伊沢さんいつもいないじゃないですか！今日だってついさっき来たばかりですし！』

釣られて私もなんだか止まらなくなってしまって、もはや収拾がつかない事態に。

皆はひたすら存在感を消して、完全に我関せずを決め込んでいる。

「俺はAちゃんのことに関してだけはすげぇ心狭いから！そろそろ分かってよ！」

『そんなの分かりたくありません！』

端から見ればそんな風には見えないかもしれないが、今の私達はお互いに頭に血が上っていた。

というか、格好良い人に格好良いと言って何が悪いのか。
あまり考えたくはないが、彼だって女性タレントさんと共演して可愛いと思うことくらいあるだろうに。

そんなことを考えていたら、どうやら彼に見透かされたらしい。