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1分後、ついに白旗を上げた彼が、ため息をつきながらこちらへと振り返ってくれた。
「…そんなこと言われてもやらないよ」
振り向きざまにその台詞である。
ひどい。
『なんでですか!こんなにお願いしてるのに!』
「いや、俺にはお願いというよりも、ただの迷惑なデカい独り言のように聞こえたけど」
相変わらずの辛辣さだ。
ただ、あまりにド正論すぎてぐうの音も出ない。
だがこんなこともあろうかと、いくつかの作戦は講じてある。
『うっ…ふくらさんは可愛い彼女の可愛いワガママも聞いてくれないんですね…』
私がめそめそと泣き真似をし始めると、彼は心底うっとうしいという顔をしていた。
この作戦は失敗。
よし次!
『私のイメージだと、伊沢さんはキザなのでお願いしてくれたらやってくれそうですけどね』
伊沢さんはできるのにふくらさんはできないんですか?というスタンスだ。
ところが彼は伊沢さんと違って超絶負けず嫌いではないので、すこぶるどうでもよさそうな顔をしている。
これも失敗。
『壁ドンしてくださいいい〜!』
次は駄々をこねる作戦だ。
子どものように床に大の字になって暴れ出す私を、彼はまるでゴ◯ブリを見るような目で見つめていた。
あの、私一応彼女なんですけど。
こうなったらもう最終手段。
壁ドンしてもらえるまで彼にまとわりつくしかない。
「ふくらさんが壁ドンしてくれるまで、ここから動きませんから!」
私がそれを力強く宣言すると、彼は顔を歪ませて辟易とした。
そんな顔をされても諦めるつもりはない。
私はふくらさんに壁ドンをされたいんです!
しばらく近くにいる私の存在を気にすることなく作業をしていた彼だったが、3分後ため息をつきながらふとこちらへと振り返った。
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作者名:Annie | 作者ホームページ:https://twitter.com/kmu_annie?s=09
作成日時:2020年8月5日 12時