今日の二人【QK】 (ページ4)

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『ちょ、ちょっと待ってください』

「早く食べ終わって」

俺の切羽詰まった様子に、慌ててその二口を口に含む彼女。

汗ばんできた額に前髪が張り付くので、俺はそれを手で後ろへと掻き上げながら彼女を見下ろした。

『食べました！』

5秒後、すべてを平らげた彼女がこちらへと向き直る。

その瞬間、俺は彼女の腰に回していた左手にグッと力を入れて自分の方へと引き寄せた。

空いていた右手を彼女の頬に添え、ロマンチックなムードを作る間もなくすぐにその唇へと口づける。

『っ…』

彼女もあまりに性急すぎるそれに驚いたようで、小さくビクリと身体を震わせていた。

だが、優しくしてあげる余裕なんてこれっぽっちもなくて。

ほのかに感じるバニラの甘さと彼女の唇の柔らかさが、俺の理性をどんどん奪っていく。

俺より数℃だけ低い彼女の口の中が心地良くてたまらない。

ここが外ということも忘れて思いがけず情熱的なキスをしてしまい、俺は彼女から唇を離した後にそれに気づいた。

Aちゃん、とぼそりと彼女の名前を呼べば、彼女は瞳を潤ませながら俺の目を見上げる。

あぁ、そんな顔をされたら余計に止まらなくなってしまうというのに。

暑さではなく、主に彼女が原因でくらりと目眩を催した。

だが、さすがにこれ以上は公序良俗に反する。

なんとか溢れ出てくる欲望を押し止めた俺は、彼女の手をギュッと握りしめながら「帰ろうか」と声をかけた。

真っ赤な顔をしながら、彼女はこくりと頷く。

危ない危ない。
外なのにうっかり止まらなくなるところだった。

彼女にバレないようにふうと小さく息をついた俺は、気持ちを切り替えるべく適当な話を彼女へと振った。

だが、何を言っても生返事しか返ってこなくて。

不思議に思っていると、彼女は

『…すみません、ちょっと遠回りして帰らせてください』

とやたらと気まずそうに呟いた。

「え、暑くない？大丈夫？」

彼女と2人きりの時間が少しでも長くなるのは願ってもないことだが、果たしてこの灼熱の中歩き続けることを良しとするのだろうか。

すると彼女は、

『こんな赤い顔のままオフィスに戻れません…！』

と顔をさらに赤らめるのだった。

思いがけないその理由に俺は一瞬だけ目をぱちくりさせたが、すぐに笑いが込み上げてきて。

“暑さのせいにすれば大丈夫だよ”と声をかけても良かったのだが、それをぐっと飲み込み、彼女との2人きりを楽しむことにした。