今日の二人【QK】 (ページ12)

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「ふくらさんごめん、俺らこれで帰るから。会社の経費で支払いお願いします」

「うん分かった。…大丈夫？」

暴れる彼女を無理矢理腕の中に閉じ込める俺を見て、彼は心配そうにそれを付け加えた。

「頑張って連れて帰るよ」

ひたすら苦笑いするしかできない俺は、彼女の大きめなバッグを引っ掴み、彼女を小脇に抱えたままその場を後にする。

外に出てタクシーを捕まえ、なんとか無事抜け出すことができたとこにホッと一息。

店を出た時こそブーブー文句を言っていた彼女だったが、タクシーの中ではすっかり甘えモード。

…そういうの、ほんと勘弁して。

まだ先程のように暴れたり文句を言ったりしていれば俺の理性が保てたというのに、酒に酔ったとろんとした瞳で甘えてくるのは本当に駄目だ。

なんとか素数を数えながら平常心を取り戻す俺。
我ながら情けない。

それにしても、元から彼女がうちに泊まる予定だったのは不幸中の幸いというべきだろうか。
彼女が酒の匂いだけでここまで酔うのは想定外だったが、後はうちに連れて帰るだけなら非常に楽だ。

膝の上に置いた彼女の大きめのバッグを見た俺は、なんだか胸の奥から歓喜が湧いてくる気がした。

さすがに酔った彼女にどうこうするつもりはないが、それでも朝目が覚めて隣で彼女が寝ているというのは幸せなことだと思う。

『いざわさぁん…』

甘い声で俺の二の腕にぐりぐり顔を押し付けてくる可愛い酔っ払いに、俺は早く家に着いてくれと願うばかりだった。