愛し方も知らない天才【QK】 (ページ10)

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愛し方も知らない天才10 ページ10

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『…あなたが側にいてくれるだけで、私は幸せです』

え、と小さく声を上げながら、彼女へ目を向けると。

彼女は俺の目をまっすぐに見つめていた。

『私にはあなた以上に好きになれる人なんて、今までもこれからもいません』

その言葉に、俺は無意識に涙を流した。

彼女はいつだってまっすぐだ。
自分の気持ちに偽りなどせず。

慌てて涙を拭いながら、俺はあまりにまっすぐすぎる彼女から逃げようとした。

「俺が自分から突き放したんだ。だからもう俺に君を愛する権利はない」

『そんなの誰が決めたんですか！？』

半歩引いた俺に、彼女がその分歩み寄ってきた。

思わずビクリと身体を震わせながら彼女の方を見ると、彼女は今まで見たこともないくらい強い目をしていた。

『あなたは私を幸せにできる自信がないと言いますが、そんなの必要ありません！なぜなら私があなたを幸せにするからです！』

息巻きながら声高らかにそれを宣言する彼女。
それを受け、俺は感極まってまた泣きそうになってしまった。

手のひらで両目を押さえながら、必死にそれがこぼれないようにする。

君はいつだって、俺の想像を超えてくる。
そんなところが、好きだった。

彼女によって徐々に逃げ道を塞がれていく俺だったが、それでもなお抵抗の意志を見せ続けた。

「…なんで君は俺のことなんて好きになっちゃったの」

すると彼女は、間髪入れずにこう返した。

『理屈なんかで説明できるものですか』

格好良すぎる彼女の答えに、俺は歯を食いしばりながら最後の抗いをしてみせた。

「自分に素直に生きていけたら幸せだろうね。でも俺は大人だから」

その瞬間、俺の唇は何か柔らかいものによって塞がれた。

それが背伸びをした彼女の唇だと気づくまで、そう長い時間はかからなかった。

驚いて目を見開く俺は、彼女の唇の感触を味わうなんて余裕もなくて。

数秒後、ゆっくりと離された唇を手のひらで押さえていると。

彼女は俺の瞳を捉えて、こう言った。

『もうこれ以上、嘘はつかないでください』

かすかに微笑んだ彼女が、信じられないくらいに綺麗で。

俺はもうこれ以上、何も言うことができなかった。

観念したかのように彼女を抱きしめると、彼女もギュッと俺の背中に腕を回してくれた。