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川上さんと初デートに行く話。5 ページ5

そんなことを考えていたら、ふと誰かに肩を叩かれた。

物思いに耽りすぎて、近くに人がいたことにも気づけなかったらしい。

慌てて背後を振り返ると、


そこにはたった今私が物思いに耽る張本人の姿が。

『川上さん!?』

「おう」

驚き過ぎてなぜここに、の一言も言えない私が、口を開けたまま硬直する。

「たまには一緒に帰ろうかと思って」

彼はそんな私の言いたいことを察してくれたのか、その理由を語ってくれた。

『まだお仕事の途中だったのでは…?』

私は彼に遠慮がちに尋ねる。
だって、彼は私がオフィスを出る寸前まで記事の確認に没頭していたはずだ。

「あーうん、まぁ別に明日でもいいから」

頭を掻きながら、彼はぶっきらぼうにそう答えた。

まさかこのタイミングで彼との2人きりの時間が訪れるとは。

込み上げてくる喜びを抑えきれず、私はギュッと目を固く瞑った。

「…ほら、付き合ってからあんまりそれらしいことできんかったやん」

私の横を歩く彼が、ふとそんなことを呟いた。

今まで何とも思っていないかもしれないと思っていた彼が、不意にそれを口にしてくれたことに、私は驚いて目を見開いた。

「なかなか2人きりにもなれんし、不安にさせてたらごめん」

照れくさそうに俯く彼に、私はブンブンと首を激しく横に降った。

『いえ!川上さんが編集長に就任されてから、お忙しいのは分かってますので!』

彼を困らせてはいけない。
支えると決めたのだから、私がわがままを口にしている場合ではないのだ。

精一杯声を張り上げてそれを告げると、彼は少しだけ寂しそうな笑みを浮かべた。

彼が私のことを少しでも気にしてくれていたということが分かっただけで良かった。
私はホッと胸を撫で下ろしながら、先程より軽やかな足取りで彼の隣を歩くのだった。

しばらくの沈黙の後、もう少しで駅に着くという寸前で、ぴたりと彼が足を止めた。

不思議に思った私が振り返りながら彼を見上げると、そこには頬を掻きながらこちらを見ようとしない彼がぼそっと呟いた。

「えーと…せっかく付き合ったし、今度どっか行く?」

その瞬間、私の中の時が止まったような気がした。

これはもしかして、もしかしなくても、デートのお誘いでは?

だか、彼は忙しくないのだろうか。
彼の時間を私がもらってしまって良いのだろうか。

と考えたのだが、そんな思考をしながらも私の口は勝手に『行きます!!!』と動いていたのだった。

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Annie(プロフ) - ひなたさん» ひなたさん、コメントありがとうございます。大事にお読みいただけて、本当に嬉しく思います。出来るだけ現実を忘れられるような、幸せなお話が書きたかったもので…。そう感じていただけて、私の方がお礼を申し上げなければならないくらいです。ありがとうございます。 (2020年7月2日 21時) (レス) id: 8c53967ba8 (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - 後書きがある時点で今後は書かれることはないのだろう、と大事に大事に読ませていただきました。私も読みながら泣いちゃいました。このお話のkwkmさんが優しくて、消化出来ない色んな気持ちを大丈夫だよって勝手に言ってもらえたようでした。ありがとうございます。 (2020年7月2日 11時) (レス) id: f0ee8abf5f (このIDを非表示/違反報告)
Annie(プロフ) - ゆうかさん» ゆうかさんお読みくださいましてありがとうございました。温かいコメントをいただけて、本当に書いてよかったと心から思っています。これからも他のメンバーのお話を書いていければと思っていますので、引き続きお付き合いいただけましたら嬉しいです。 (2020年7月1日 12時) (レス) id: 8c53967ba8 (このIDを非表示/違反報告)
Annie(プロフ) - 217さん» リクエストありがとうございました。絶対に今日中に書き上げなければと23:57に滑り込みで公開させていただきました。現実からかけ離れて、楽しんで読んでいただけることを願いながら書きました。宝物と言っていただけて、本当に涙が出るくらい嬉しいです。 (2020年7月1日 12時) (レス) id: 8c53967ba8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか(プロフ) - 素敵なお話をありがとうございました…! (2020年7月1日 7時) (レス) id: 41b5f36188 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Annie | 作者ホームページ:https://twitter.com/kmu_annie?s=09  
作成日時:2020年6月30日 23時

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