暑い日に彼女に暑苦しい束縛をした話。 (ページ1)

今日:5 hit、昨日:11 hit、合計:56,607 hit

暑い日に彼女に暑苦しい束縛をした話。ページ1

物凄く、暑い日が続いている。

駅からオフィスまでの道のりを歩いているが、わずか1分歩いただけで額からは滝のように汗が流れ落ちる。

なぜ1日で最も気温の高い午後2時に、俺はオフィスに向かっているんだ。

早く冷房が効いたオフィスに行きたい、と思ったが、この暑さのせいで足取りも重い。

一歩一歩進むたびにぽたぽたと滴る汗。
背中のリュックからプロテインドリンクを取り出し、それを飲みながらなんとかオフィスへとたどり着くことができた。

ドアを開けた瞬間、一気に流れ出てくる冷たい空気によって体温が下がっていく。

はぁ、涼しい。

冷気によって身体が冷えすぎないよう、タオルで顔や首、腕などの汗をササッと拭き取る。

「おっす」

タオルをしまいながら作業部屋へ行くと、何人かのメンバーと共に愛しの彼女の姿が。

「お疲れ」

「おいっす」

「お疲れさまでーす」

『お疲れ様です』

棒付きアイスを頬張る彼女に、俺は究極的に癒やされた。
思わず微笑みながら彼女の姿を目に焼き付ける。

だが。

よーく見ると、彼女は何やら衝撃的な格好をしていた。

髪をポニーテールに結い上げ、滅多に拝むことのできないうなじ。
そして白い薄手のキャミソールに、デニムのショートパンツ。

彼女の細くて白い脚と腕が、惜しみなく露わになっている。

その姿を見た瞬間、冷房で冷やされた俺の体温が氷点下まで下がりそうになってしまった。

「ちょっと！待って！」

アワアワと慌てふためく俺を、その場にいる全員が不審そうに見つめた。

「はいはい、また今日も“Aちゃんが可愛すぎる！”って騒ぐんでしょ。さすがに毎回やられるとうざいんだけど」

ふくらさんの鋭すぎるツッコミが、俺の胸に突き刺さる。
だが、今日の論点はそこではない。
いや確かに今日も彼女は可愛いのだが。

「違ぇし！あのさ、もしかして、もしかしてだけど、今日その格好でここまで来た？」

今の俺は、暑さによるものではなく、嫌な予感から冷や汗をかいていた。
彼女はこてんと首を傾げながら、さも当然のように

『そうですけど』

と答える。

なんてこった。
一体何十人何百人の人が彼女の柔肌を見たというのか。

絶望から、膝からズシャッと盛大に崩れ落ちる。

かつて夏がこれほどまでに憎らしく感じたことはない。

彼女は意味不明とばかりに顔をしかめ、俺の様子などまったく気にする様子もなくアイスをシャクシャク食べている。