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伊沢さんに看病される話。9 ページ9

あんなに心臓がバクバク言うほど緊張してたのに、私はいつの間にかすっかり眠り込んでしまったようだった。

カーテンの隙間から漏れる夜明けの光に照らされた私は薄く目を開ける。
すると、目の前に大好きな人の顔があって。

『!??』

驚きのあまり硬直するが、昨夜の記憶がすぐに呼び起こされた。
彼はまだ眠っていたが、私をしっかり抱きしめたままで。
気づくと私の寒気もどこかへ行ってしまったようだった。
あぁ、少しだけ大人の階段を登ってしまったな…。
私は彼を起こさないように心の叫びを堪えながら、羞恥に身悶える。

しばらく彼の寝顔を見つめていた私は、ふいにさらりと落ちる彼の前髪に軽く触れてみた。
その瞬間、彼は小さく唸り声を上げながら、眉をぐっとひそめゆっくりと目を開ける。

薄く開かれた焦点の定まらない視線が、私の視線と絡み合った。
しばらく私の瞳を眺め続けた彼は、やがて子供のようにふにゃりと微笑み、

「おはよう」

と少し掠れた声を放った。
そして私の頭をゆっくりと撫で始め、

「体調はどう?」

と声をかけてくれる。

『…伊沢さんのおかげで、すっかり元気です』

私がそう言いながら彼の大きな手のひらに頬を擦り寄せると、彼は屈託のない顔で笑ったのだった。

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作者名:Annie | 作者ホームページ:https://twitter.com/kmu_annie?s=09  
作成日時:2020年3月14日 10時

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