初恋ノスタルジー【QK】 (ページ15)

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初恋ノスタルジー15 ページ15

「そういえば、なんで僕に彼女がいると思ったの？」

おもむろに彼にそれを問われ、

『伊沢さんに相談した時に聞いたの』

と正直に答えた。

「伊沢さんめー」

それを聞いて静かにメラメラと怒りを燃やす彼に、私は苦笑いをしてしまった。

あんなに堂々と退職宣言をしておいて、その5分後には撤回するなんてさすがに自分でも人格を疑う。

緊張の面持ちで、玄関ドアを開け中へと入る彼の後へと続いた。

私の顔を見るなり、3人は安堵の表情を浮かべている。

「あ、戻ってきた」

「よくやった山本！QuizKnockのアイドル連れ戻し作戦成功だな！」

ふくらさんと須貝さんが、パチパチと彼に拍手を送った。

そして、2人の視線はおのずとつながれている私達の手に。

「ん？」

「え？どういうこと？」

混乱している彼らを余所に、伊沢さんがふっと微笑む。

「良かったね、Aちゃん」

すると、私の隣にいる山本くんが強く抗議をし始めた。

「良かったねじゃないですよ！伊沢さんが僕に彼女がいるとか変なことAちゃんに言ったから！！」

「あれ？山本彼女いるって言ってなかったっけ」

伊沢さんは頭をひねりながら記憶を呼び起こそうとしている。
どうやら本気でそう思っていたようだった。

「前の子はQuizKnockに入ってすぐに別れちゃいましたよ！」

山本くんの発言に、伊沢さんは「あぁ、納得」と言いながらうんうんと頷いている。

伊沢さん…。

それでも、結果的に山本くんと付き合うことができたのだから、私は彼にお礼を述べるべきだ。

彼はにこりと笑い、

「で、付き合うことになったんだ。おめでとう」

『ありがとうございます。伊沢さんのおかげです』

ぺこりと頭を下げると、途端に響き渡るふくらさんと須貝さんの絶叫。

2人には何も言っていなかったから、驚かれてしまうのも無理はないなぁと苦笑する。

山本くんはくるりと私に振り返ると、

「これからよろしくね」

と笑いかけてくれて。

私はおそらく、一生その笑顔を忘れることはないのだろう。

心に刻まれた彼の笑顔を胸に、

『こちらこそよろしくお願いします』

と私も彼に微笑むのだった。