皆で夢の国に行く話。

皆で夢の国に行く話。3 ページ3

「おい！俺はAちゃんと2人きりのデートのはずだったんだけど！？」

憤慨しながら皆に横槍を入れる彼。

…やっぱり。
そう簡単に納得してくれるはずないよなぁと肩を落としてると、不意にどこからか視線を感じた。

視線のする方へ向いてみると、川上さんが私にだけ見えるよう小さくジェスチャーをしている。

普段察しの悪い私でもさすがにわかった。
あれはきっと“伊沢さんの機嫌を取れ”という意味が込められている。

どうしようとオロオロしながら、私は声を荒げ続ける伊沢さんの服の裾をギュッと掴んでみた。
こちらを振り返る彼に、精一杯の上目遣いをして見せる。

『楽しみですね』

控えめにそう言うと、彼は呻き声を上げながらその場に崩れ落ちた。

私は足元にうずくまるCEOに声をかけるべきかそうでないのかわからず、ひたすらぽかんとすることしかできない。

皆も神妙な面持ち(のフリ)で伊沢さんをジッと見つめている。

そして数十秒後、伊沢さんは白旗を上げた。
うずくまったまま、確かに「行く」と小さく呟いたのだ。

一同、歓喜。

私は無事にミッションがコンプリートしたことに安堵。

「その代わり、俺とAちゃんは2人で別行動だからな！お前らついてくんなよ！」

伊沢さんはバッと立ち上がって皆にビシっと力強く指を差した。

全員が聞いていないフリを決め込んだので、さらに伊沢さんは憤慨。
私はその光景を苦笑いをしながら見守るばかりだった。

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