笑わない君に、恋をして。3 ページ3
「内容は普通におもろい。ただ、こことここの日本語表現がおかしいから読み手には伝わりにくいかも」
1分後、私の書いた記事を読み終えた彼がそんなアドバイスをくれた。
自分でも確認してみると、書いている時は気づかなかったが、確かに彼の指摘通りおかしかった。
『本当だ！』
慌てて修正をする私の頭を、川上さんがくしゃりと撫でる。
「頑張れ文学部」
そう言って彼は一瞬だけ笑ってみせた。
その一瞬の笑顔が、私の目にいつまでも焼き付いてしまって。
再び鼓動が忙しなく動き出すのを感じたのだった。
『私は日本語学専攻の川上さんと違って日本文学専攻ですもん』
何か言わなきゃ、と思い、焦った挙げ句にうっかり可愛くないことを言ってしまった私。
言ってしまってから大後悔をする。
「そういう問題やないやろ」
川上さんはその言葉を残して自分のデスクへと戻って行った。
もう少し側にいてほしかったな。
そんな甘えた考えを振り払うかのように首を横に振る。
その時、
「4月から俺が編集長やし、伊沢さんと違って優しく言ってあげられんから」
と彼がぽつりと呟いた。
その言葉に、私は頭を殴られたかのような衝撃を受ける。
彼が編集長になることは聞かされていた。
ただ、その一言はQuizknock編集長という肩書きを背負うことに未だ少しの戸惑いを含んだ口調だった。
今やQuizknockは主にYoutubeのおかげで知名度が大幅にアップし続けている。
その中で役職を得るということは、誰だってプレッシャーに感じることだろう。
ましてや今まで伊沢さんが行なってきたことを引き継ぐのだ。
少なからず比べられてしまうことだってあるだろう。
私はそんな彼に頼ってばかりではなく、自分でも成長しなければと思わされた。
もっと一人でできるように頑張らなきゃ。
彼のおかげで記事の執筆を終えた私は、今度は動画の企画案を考え始める。
だが、先程の彼の一言が頭から離れなかった。
彼が編集長になるということは、正式にYoutubeを卒業するということ。
まだ視聴者さんには発表していないが、それが行なわれた時本当に卒業ということになる。
最後の撮影を終えた時、彼は「無事に東大卒業が決まったら発表する」と言っていた。
卒業者発表まであと2ヶ月。
どうかその日が来ませんように。
川上さんが、それまでにYoutube卒業を考え直してくれますように。
私はぐっと涙を堪えながら、それを祈ることしかできなかった。
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Annie(プロフ) - 217さん» ありがとうございます！共感していただけて大変恐縮です…！お話も楽しんでいただけて本当に嬉しく思います。これからも少しでも楽しんでいただけるよう頑張りますので、よろしくお願いします！ (2020年5月13日 12時) (
レス) id: 8c53967ba8 (このIDを非表示/違反報告)
217(プロフ) - いつもお話を拝読している者です。いつも楽しく読ませてもらっています…！今回のお話があまりにも自分の気持ちを代弁してくれていたので我慢できずにコメントを書いてます。どのお話もだいすきです。これからも応援しています…！ (2020年5月13日 0時) (レス) id: cc2f607952 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Annie
| 作者ホームページ：https://twitter.com/kmu_annie?s=09
作成日時：2020年5月12日 12時
