なれそめ。Side:I 7 ページ7
ある日の動画撮影後。
皆でまったりしていると、ふと須貝さんが彼女にクイズ勝負を持ちかけていた。
クイズ初心者同士、どちらの実力が上なのかハッキリさせたいのだろう。
さすがに彼女へのハンデとして、問題は文系のものから出題するという条件のようだ。
ふくらさんが問読みをし、2人が早押しボタンを握り締める。
しばらく様子を窺っていると、須貝さんが押されているようだった。
さすがに問題のレベルが高く、専門ではない彼は苦戦する姿を見せている。
彼女も真剣な目つきで素早く早押しボタンを押していた。
結果は5対3で彼女の勝利。
悔しそうな表情を浮かべる須貝さん。
「すごいね〜!Aちゃん。須貝さんに勝つなんて」
問読みをしていたふくらさんが彼女の善戦に拍手を送る。
「負けたー!マジで悔しい!!」
須貝さんも頭を抱えてジタバタ。
『いえ、たまたま知っていたことが問題に出てきたので…』
こんな時でも彼女は自分の実力を過信せず、控えめな対応をしていた。
それを聞いた須貝さんは、ふいに彼女の方に両手を伸ばす。
何をするつもりなのだろうかと思った瞬間、彼は彼女の頭をまるで子犬を褒めるかのようにわしゃわしゃと撫で回した。
「くそ〜!次は絶対負けねぇからな〜!」
それをされた彼女は、目を瞑って少し困ったような顔をしている。
俺は咄嗟に立ち上がり、思わず「須貝さん!!」と声を上げてしまった。
驚いて一斉に俺に視線を注ぐ一同。
一瞬にして部屋が沈黙に包まれた。
「えっと…Aちゃんは女の子なんだし、あんまり触れたりするのは辞めた方がいいんじゃないかな…」
俺が言い訳がましくか細い声でそう言うと、彼は「あ、あぁ…そうね…」と彼女から手を離した。
気まずい。
そもそもなんで俺は声を上げてしまったんだろう。
彼が彼女に触れるのが嫌だと思った。
それが何故なのかは自分でもわからない。
俺は首を傾げながら再び座った。
その後、皆は何事もなかったかのように話を始める。
彼女の方に目をやると、須貝さんとふくらさんと楽しそうに話をし続けている。
その笑顔を見て、また胸が締め付けられたのだった。
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作者名:Annie | 作者ホームページ:https://twitter.com/kmu_annie?s=09
作成日時:2020年3月27日 19時