なれそめ。Side:I 3 ページ3
俺はあまりの気迫にただただ口を開けることしかできなかった。
彼女にそんな態度を取られるのも初めてだったし、まさか断られることはないだろうと思い込んでいたのもあったからだ。
ここにいる皆はそうやって両立を乗り越えてきたし、俺が学部生の頃はレポートの貸し借りもあった。
さすがに丸パクリは避けていたものの、提出ギリギリまで知恵を出し合ってお互いの窮地を救い合ってきたのだ。
だから、彼女は自分のピンチをあくまで彼女自身の力で乗り越えようとする潔癖さを今目の当たりにした俺は、彼女のことを尊敬もしたし恐ろしいとさえ感じた。
彼女は決して自分の限界を自分で決めてしまわないのだろう。
100%自分でできると思うのは、誰かの力を借りたりしない。
できなそうだからと保険をかけるという頭も恐らくない。
それができる人間が、果たしてこの世の中にどれほどいるだろうか。
彼女はきっと大成すると、俺はその時思った。
そして同時に、そんな素晴らしい人材がこのQuizKnockに入ってくれたことを誇りに思ったのだった。
そのまま俺は、無言で自分の席に座った。
クイズ作成の仕事を進める中、時折彼女の方をちらりと見ると、物凄い集中力でレポートを書いている。
そのひたむきな姿に、俺は思わずふっと微笑みを漏らした。
俺も自分の仕事を頑張ろう。
心なしかいつもよりタイピングする指が軽く感じた。
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作者名:Annie | 作者ホームページ:https://twitter.com/kmu_annie?s=09
作成日時:2020年3月27日 19時