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小春日和と伊沢さんと。8 ページ8

伊沢さんと2人、当てもなく歩いている。

道に咲く花のことを教えてくれたり、先日の仕事であった面白い話をしてくれたり、彼との時間は退屈することなど一瞬たりともなかった。

オフィスに向かうまでも綺麗だと思っていた春の景色は、彼と一緒だとさらに輝いて見えるようで。
さらさらと風になびく彼の髪一本一本さえ愛おしく思えるのだった。

やがて小さな公園にたどり着いた私達は、そこにあったベンチに並んで座る。
すぐに可愛らしい鳥の声が聞こえてきて、私と同じで春の訪れを喜んでいるように思えた。

何を話すでもなく、ただ黙って陽の光を浴び続ける。
今なら光合成ができそうな気がしたが、私よりも伊沢さんの方が遥かに爽やかな印象なので、今にも彼から酸素が出てきそうな気がしてならなかった。

こうしてぼんやりするのは随分久しぶりかもしれない。
充実はしているものの、目まぐるしい毎日に気づかないうちに疲れていたところがあったようだ。

こんな心穏やかになる機会を作ってくれた彼に、声には出さなかったが大きな感謝を送る私。

すると、伊沢さんがスッと私の顔を覗き込んできた。

「Aちゃんて、太陽みたいだよね」

突然そんな大それたことを言われ、私は思わず恐縮する。
彼はそれを見てふっと微笑みを漏らすと、こう続けたのだった。

「いつも明るく優しく俺のことを照らしてくれてありがとね。時々激しかったりすることもあるけど、俺はそんなAちゃんと出会うことができて本当に幸せだ」

きゅ、と私の手を伊沢さんが握る。

彼に対する感謝や愛しさやいろいろな感情がこみ上げてきて、私は声を詰まらせてしまった。

今何かを伝えようにも、私は溢れ出るこの気持ちを10分の1でも彼に伝えることができないだろう。
私が口を開けば、例え何を言ったところですべてが安っぽくなってしまう気がした。

何を言おうか言うまいかとおろおろしているうちに、彼は私の頭を優しく撫でてくれる。

陽だまりの下にいる伊沢さんが、いつにも増して格好良く見える。
私がその眩しさに視界をチカチカさせながら、彼の手を握り返す。
それが私にできる精一杯の応えだった。

ふわりと髪をくすぐる風が心地良くて、思わず彼の肩にこてんと頭を乗せる。
なんだか眠くなってきてしまった。

伊沢さんは何も言わずにそんな私の手をずっと握ってくれている。

うとうとと微睡む私の髪に唇を寄せる伊沢さんが、好きだよとそっと呟いてくれた気がした。

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設定タグ:QuizKnock , 伊沢拓司 , 夢小説   
作品ジャンル:ラブコメ
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Annie(プロフ) - ふうさん» ふうさんこんにちは、お返事が遅くなってしまい申し訳ありません…!また、ご指摘いただきましてありがとうございました!私の知識不足で安易にタイトルをつけてしまいました…修正するのも今更なような気がするので、このままにしてしまおうかと思います。すみません! (2020年7月26日 14時) (レス) id: 8c53967ba8 (このIDを非表示/違反報告)
ふう - 小春日和は、秋の春みたいに暖かい日を、さす言葉ですよ。分かりづらくてすみません。 (2020年4月20日 22時) (レス) id: 2bb3a5dd8a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Annie | 作者ホームページ:https://twitter.com/kmu_annie?s=09  
作成日時:2020年3月21日 12時

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