小春日和と伊沢さんと。4 ページ4
「お疲れー」
しばらくすると、伊沢さんがやって来た。
「よっすー」
「お疲れさまです」
『…オツカレサマデス』
須貝さんとこうちゃんが涼しい顔で彼に挨拶をする中、カチコチに固まった唇を懸命に動かしながらなんとか挨拶を交わす私。
「Aちゃん、来てたんだね!」
私の顔を見た途端、ぱあっと晴れやかな表情を浮かべる伊沢さん。
手にしていた荷物の中からごそごそと何かを探った後、彼は1冊の雑誌を取り出した。
「はいこれ。この前受けた俺のインタビューが載ってる雑誌の見本誌。今日届いたんだ」
そう言いながら私にそれを嬉しそうに差し出してくれる。
彼は伊沢オタクである私のために、いつもこうやって自分が載っている雑誌を見せてくれたり、出演する予定のテレビの情報などを教えてくれたりする。
私はそれを受け、ご機嫌でどの雑誌を何冊買うか考えを巡らせたり、テレビの録画予約をしたりするのだ。
ただ、今日はこの寒さのせいかそれを手放しに喜ぶことができなかった。
『…ありがとうございます』
いつになくテンションが低いままそれを受け取る私。
彼が載っているページをめくり、インタビューの記事に目をやるがまったく内容が頭に入ってこない。
喜ぶ素振りを見せねばと、にこりと引きつった笑みを伊沢さんに向け。
彼は自分に向けられた私の気持ち悪い表情に唖然としている。
ここで私の我慢が限界を迎えた。
慌てて雑誌をデスクに置き、コーヒーを口に含もうとするが、すでにマグカップの中のそれは空になっている。
「…コーヒーを淹れてきます」
未だに口を開け続ける彼を置いて、私はマグカップを片手に足早にキッチンへと向かった。
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Annie(プロフ) - ふうさん» ふうさんこんにちは、お返事が遅くなってしまい申し訳ありません…!また、ご指摘いただきましてありがとうございました!私の知識不足で安易にタイトルをつけてしまいました…修正するのも今更なような気がするので、このままにしてしまおうかと思います。すみません! (2020年7月26日 14時) (レス) id: 8c53967ba8 (このIDを非表示/違反報告)
ふう - 小春日和は、秋の春みたいに暖かい日を、さす言葉ですよ。分かりづらくてすみません。 (2020年4月20日 22時) (レス) id: 2bb3a5dd8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Annie | 作者ホームページ:https://twitter.com/kmu_annie?s=09
作成日時:2020年3月21日 12時