検索窓
今日:17 hit、昨日:3 hit、合計:148,298 hit

第二十七滑走 導くA. ページ30

「それじゃ、アタシそろそろ行くわ。
これからレッスン入ってるのよね〜」

ひらひら〜と手を振って立ち上がる。

普段通りのミナコさんだった。

それを見て何故か少しほっとする。

「あ、あと最後に」

部屋から彼女が出ていく瞬間、あっと思い出したようにこちらを振り向いた。

「ちょっとは進んでみても後悔はしないんじゃない?
案外そういうのっていけちゃうものよ」

じゃあね。

そう言って彼女は出ていった。


ミナコさんは僕がフィギュアを拒む理由を知りながらも僕にこの提案を持ち出した。

…その事に、一体どんな意味が含まれているのだろうか。

深い意味などないかもしれない。

ただ単純に、勇利の演技を一緒に見に行こうというお誘いであることには間違いない。

だけれど、ヴィクトルとユーリが“長谷津(ここ)”へ来ている今。

他の理由があるのだと感じてならない。

何度も言うけど僕はフィギュアが嫌いだ。

勿論、勇利の事は応援してるしこれからもするつもり。

しかしそれとこれとは別問題な理由であって。

もし、僕がもう1度スケートリンク(あの場)へ行ったとしたらきっと正気じゃ居られないのは、考えなくても分かることだった。


もう思い出したくない。

忘れたい。

過去を消したい。


…最近、ストレスでどうにかなってしまうんじゃないかと切実に思う。

こりゃあ、あと数年もすればストレスにより禿()げてるかもしれないな←

精一杯、思考を誤魔化そうとする。

そうでもしていないとやってけない。



…うん。

なにか別の楽しいことでも考えよう。

僕は違うことへ意識を持っていこうとしたが上手くいかなかった。


・*:..。o○☼*゚・*:..。o○☼*゚・*:..。o○☼*゚


それからしばらくの間ぼーっとしていたが、結局頭の中は悶々(もんもん)としていた。

『ちょっとは進んでみても後悔はしないんじゃない?』

帰り際、彼女が残した言葉。

『案外そういうのっていけちゃうものよ』

そのたった二文の言葉は、僕の心にまとわりついて離れなかった。

「僕は、一体何をしているのかな」

案外、端だから見たらどうってことないことなのかもしれない。

僕は何気なく壁にかけてあるカレンダーを見上げる。

あと数日。

温泉onICEの本番。

そこで、2人のユーリが滑る。



どうするべきか。




そんなことはもうとっくに答えが出ているはずだ。

終わり ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)


←第二十六滑走 初耳



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (183 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
410人がお気に入り
設定タグ:ユーリ!!!onICE , YOI , 男主   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:樹乃 | 作成日時:2016年11月5日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。