第二十五滑走 チケット ページ28
「ほーら、何辛気臭い顔してんのよ」
「うぐっ」
いきなりの
そんな事を僕にするのは、知る限りたった1人だ。
「…ミナコさん」
一体いつからいたのか。
声がした方を振り返れば彼女がいた。
「ちょっと、何よその面倒くさそうな顔!?
折角来てあげたんじゃない」
「あ〜ありがとうございます←」
「物凄く棒読みなんだけど←」
いやいや、だって会って早々拳繰り出すなんてなかなか出来る技じゃないだろう←
僕はまだ地味にジンジンと痛むお腹を擦りながら言う。
「勇利達ならきっと今日もアイスキャッスルに行ってますよ」
「あぁ、それなら知ってるわよ。
でもほら、練習中だったら邪魔しちゃいけないし。
本番だって近いでしょ?」
「はぁ…」
そうですか。
でもまぁ、僕には関係ないけれど。
と、心底どうでもよさそうに僕は曖昧な返事をする。
だが、そんな僕の態度に別にどうこういうわけでなく、彼女はそのまま続けた。
「それに練習見ちゃったら本番どんな演技をするのか分かっちゃって楽しみがなくなるじゃない
それに今日はアンタに会いに来たの」
…確かに、ミナコさんは今までも勇利の練習は殆ど行っていない。
自分の仕事もあって忙しいのもあるのだろうけれど、そんな理由があったのか。
…ヴィクトルが今のミナコさんの言葉を聞いたらきっと喜んでいたことだろう。
彼はサプライズが大好きだから、きっと『ミナコはよく分かってるね♪』とでも言って抱きしめていたんじゃないだろうか。
そんな後継がありありと浮かんできてついついクスッと笑ってしまう。
「なになに〜?
今、ちょっといい事考えてたでしょ」
「え!?」
「アンタ本当わかりやすいわ〜」
そう言ってミナコさんは僕の顔をツンツンとつつく。
…やめて欲しい←
「それでさ、アンタに会いに来た理由なんだけど…」
バチりと視線が交わる。
そしてミナコさんはにやりと笑う。
あぁ、これはなんか企んでるのかと僕の第六感が働く。
僕のこの勘が働いた時は大抵何かが起こる。
しかも大抵良くないことが起きるのだ。
僕がそんなため息をつきたい気持ちになっているとは知らず、ミナコさんは目を輝かせて言った。
「Aも一緒に観に行かない?」
少しの間があく。
「…練習を?」
「いやいや、本番よ。
もうアタシAの分もチケットもゲットしちゃってるし」
…え?
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作者名:樹乃 | 作成日時:2016年11月5日 23時