【ユーリ!!! on ICE】a ray of hope【男主】 (ページ25)

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第二十二滑走 yuri's memory ページ25

～ユーリ・プリセツキーside～

｢それじゃあ、僕は帰るから｣

“アイスキャッスルはせつ”はすぐそこだというところで、Aは別れの挨拶を言った。

｢アンタは行かねぇの？｣

後ろを向いて歩き始めたAに、思わず声をかける。

ヴィクトルと知り合いだし、このまま一緒に中に入るもんだと思っていた自分は少々驚いた。

｢あぁ、ここまでマスコミが囲んでるところを見ると部外者立ち入り禁止になってると思うし。
あ、でもきっと君＿ユーリは大丈夫だと思うよ。
ヴィクトルと仲いいみたいだし｣

｢はぁ!?
仲良くねぇよ、あんな奴!!
ってかそもそもアイツのせいでわざわざここまで…
って、アンタ部外者じゃねぇだろ…｣

つい、ぼそりと呟く。

それがAに聞こえたのかどうかは分からなかったが、少しだけ寂しそうに笑って、｢じゃあ｣と言ってまた元来た道を歩き始める。

…一体何なんだよ。

…Aは、オレの憧れの選手の1人だった。

オレがまだノービスで小さい時、何度か練習場ですれ違った事があった。

一目見ただけで、彼の姿は脳裏に焼き付いた。

オレは急いでコーチにアイツは誰だと聞いて、Aを知ったのだ。

Aは、大会まで強化練習をする為に二週間前からここ、ロシアで練習をしているそうだった。

何しろ、初のシニアデビュー戦が迫っているそうでヤコフからも度々助言を貰っているようだった。

そして、Aの傍にはいつもヴィクトルがいたのだ。

時にはお互いにアドバイスをしあったり、一緒に滑ったり、喧嘩をしていたり…自分の練習の合間にそんな二人のやり取りを見るのがいつからか、毎日の日課になっていた。

ヴィクトルはここの選手の中で最も期待されている選手の1人だったが、決してAも負けてはいない。

スケートの技術も勿論だが、何よりも一目置いたのはその表現力だった。

表現力という言葉で一括りにしていいものかもわからないが、誰もの目を引くような。

そう、姿形は同じなのになにか惹かれるものがAのスケートにはあった。

リンクメイトや周りの人は皆こぞって凄い才能の持ち主だと言って持て囃(はや)したが、オレはそう感じなかった。

勿論、人を惹き付ける何かを持っているのは事実だが誰よりもAは練習していた。

それはもう朝から晩まで。

酷い時にはリンクが閉まってからも、Aは整備の人にお願いをして人知れず練習していたのだ。