第二十一滑走 kaleidoscope ページ24
「…僕、昔君と会ったことあるっけ?」
そういった後に僕はあっ…と思った。
もしこれで会ったことあるとか言われたら僕はなんて失礼な人だろう。
…自分で墓穴を掘ってしまった気分だ。
しかし返された言葉は素っ気なかった。
「オレが一方的に知ってる」
「あ、そうですか。
よかったです(?)」
変な返事をしてしまったが、最悪な状況は免れホッとする。
…でも、一方的って…やっぱり彼もスケートをやっていた、もしくはやっているのだろう。
ヴィクトルを訪ねてわざわざここまでやってきたところを見ても、何かしらフィギュアと関係していると考えて間違いない。
…昔の僕だったら。
昔の僕だったら、今の状態をどう感じるのだろうか。
…愚問を繰り返すのも、もう辞めにしたい。
その後は“アイスキャッスルはせつ”に着くまでの間ポツリポツリとだが他愛のない会話をした。
意外にも、彼とは波長が会うらしい。
彼も人とはそこまで深くかかわらないタイプらしく、あっさり対応同士(僕の場合コミュ障だけれど)それなりのやり取りを楽しんだ。
人は見た目で判断するなと言うが、その通りだと思う。
因みに第一印象は“外国のめちゃくちゃ怖い少年に絡まれる”だったから、もっとオラオラ系のヤンキーかと思っていた←
でも実際、彼は口は悪いけど大人な対応をしていると思う。
僕の過去を色々知っていて、聞きたいこともたくさんあるようだったけれどこちらの気持ちを察してか、そのことについては1度も聞かれなかった。
きっと聞かないでいてくれてるんだ。
…こんな少年にまで気を使わせるとか…本当、大人気ない。
「…そう言えば君の名前。
聞いてなかったよね」
不意に頭に浮かんできた質問。
商店街からだいぶ歩いて、目的地とその周りに集まる人だかりが見えてきた。
もう少しで到着という頃僕は尋ねる。
相手は僕の名前を知っておきながら僕は君の名前を知らないのは何となくスッキリしないし、名前くらい聞いておこう。
彼は立ち止まった。
そして僕を見据えた。
彼の瞳が光に反射してキラキラと光った。
…万華鏡のようだ。
フードを深く被っていて今まで気づかなかったものの、彼は随分と綺麗な顔立ちをしていた。
白い肌にサラサラと風になびく髪の毛が、まるで指輪物語に出てくるエルフの様な、言葉では形容し難い美しさだった。
思わず息を呑む。
「ユーリ。
ユーリ・プリセツキーだ」
彼は凛とした声でそう答えた。
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作者名:樹乃 | 作成日時:2016年11月5日 23時