第二十滑走 ツイてない日 ページ23
歩いている時僕達は終始無言だった。
実を言ってしまえば僕は結構不機嫌だった。
何故かって、そりゃあ面倒事に巻き込まれたからだ。
本当は今日はゆっくりと公園でのんびりと煙草を吸いながら空を見上げるつもりだったのだ。
風を感じて。
美味しい空気を吸って。
そしてそのまま眠りにつければ一番最高だ。
それなのに、何故僕はこの少年をリンクまで送り届けなければならないのか。
…自ら人が集まる場所へ行くなんて僕にとって自爆行為でしかない。
しかし僕はそこへ行かなくてはならない。
何より、曖昧だったが「あぁ…」と返事をしたのは自分自身だし、まだ未成年土地勘もないであろう少年をそのまま置き去りにするなど僕の良心が許さなかった。
顔色の悪い男と黒ずくめの少年が並んで歩く姿はそりゃあもう目立つから、すれ違う人々の視線が酷く痛く感じた。
こんなに視線が自分へと集中するのはいつぶりだろうかと変に身体に力が入る。
…こんな目立つ行いは僕のルールに反する。
極力目立たない、関わらないが原則だというのに…
なんて、グダグダと心の中で愚痴を零しながら僕は煙草を取り出した。
少年の登場のせいで結局吸えていなかったのだ。
これを吸って、少しはこんな憂鬱な気分も無くなるだろう。
カチッ…カチッ…
…おい、待てよ。
カチッカチッと何度も挑戦するが、失敗に終わる。
…嘘だろ。
ライターが切れるなんて、本当にツイていない。
まさかここまで不運が続くとは。
ガックリと項垂れる。
ここまで何もかもが重なると、誰が悪いとか誰の性とかではないけれど、ショックを通り越して怒りまで覚えるほどだ。
…思わず舌打ちしそうになる。
煙草を吸うと短気になるとよく言うが、それは本当かもしれない。
イライラしながらも、折角取り出した煙草をケースへ戻す。
そんな一連の動作を見ていた彼は呆れたような顔をこちらへ向ける。
「…何?」
イライラしているのもあって、つい声をかける。
「いや、会った時から薄々匂いで気づいてたけど、アンタ、煙草吸うんだなと思って」
「あ…ごめん、苦手だった?」
自分でも気をつけているつもりだが、煙草の香りは誰もが好むものではない。
吸わない人にとっては、少量の匂いも結構くるものがある。
「別に。
…ただちょっと以外っ…てか、昔のアンタはなんかそういうの嫌いそうなタイプだと思ってし」
第二十一滑走 kaleidoscope→←第十九滑走 ロシアンヤンキー
410人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:樹乃 | 作成日時:2016年11月5日 23時