【ユーリ!!! on ICE】a ray of hope【男主】 (ページ17)

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第十四滑走美しさページ17

～勇利side～

｢ほら、もっと腕振って。
スピード落ちてるよ｣

この寒い時期。

手袋やマフラーがないと凍えてしまいそうなほどの気温のなか、僕はジャージに薄いジャンパーという薄着をしている。

当たりには僕の荒い息遣いとヴィクトルの声だけが響く。

そう、ヴィクトルは僕のコーチになった。

今、こうして当たり前のようにトレーニングの走り込みをやって平然を装っているが、未だにヴィクトルが僕の後ろを自転車で追いかけながら声をかけてくるのが信じられない。

ヴィクトルが、こんなにも近くにいる。

それだけで僕はおかしくなりそうだった。

｢ちょっとユーリ!?
どこまで行くの！まだ走り足りないの？｣

はっと気がついてみると、とっくに目的地の公園に着いていて、ヴィクトルもだいぶ後ろで止まっていた。

｢あ、ごめん｣

…考え事をしていると、周りが見えなくなるのは昔からの癖だ。

｢ちょっと休憩しようか｣

ヴィクトルはそう言って、僕にベンチに座るよう促す。

｢うん｣

隣にヴィクトルも腰をかける。

僕とヴィクトルの間にはマッカチンが尻尾を振りながらちょこんと座る。

ベンチに男2人とプードル一匹。

…ヴィクトルなんてリビングレジェンドだというのに、なんてシュールな光景だろうと思う。

ペットボトルの水を飲みながらヴィクトルを見つめる。

…なんて美しいのだろう。

サラサラの銀髪に、透き通るような肌。

｢…何？
さっきから熱い視線を感じるんだけど｣

｢うわぁ!?
ご、ごめん｣

ぼーっとしてるとヴィクトルが不意にこちらを向いて言う。

｢ただ、肌綺麗だからお手入れとかもこだわってるのかなって思って｣

｢まぁね、フィギュアは魅せるスポーツでもあるし、見た目にはこだわってるよ｣

…凄いなぁ。

本当に尊敬してしまう。

彼は今まで1度だってフィギュアに対して手を抜いたことがない。

テーマを決めればとことん忠実にそのテーマを掘り下げ、より深い部分まで、僕らを彼の世界へと誘(いざな)う。

僕も彼の滑りに魅了された1人。

それがヴィクトルのフィギュアであり、僕と決定的に違う部分でもあった。

彼はスケートを愛している。

彼は皆をスケートで驚かせるのが好き。

僕はただスケートを滑るのが好き。

サプライズとか自分で企画して実行するのは苦手。

それもあって、ヴィクトルが僕のスケートを見て日本に来てくれたなんて本当に嘘だと思った。

僕は彼と色々と違いすぎる。