【ユーリ!!! on ICE】a ray of hope【男主】 (ページ16)

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第十三滑走その傷痕はページ16

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…目を開けると、畳の藺草(いぐさ)の匂いと、タバコの香りがした。

…あぁ、僕、あの後そのまま寝てしまったのか。

明るい陽射しが襖の隙間から入り込む。

随分と寝過ごしてしまったらしい。

来ている服は昨日のままで髪の毛は寝癖がついてボサボサ。

長時間寝たはずなのに、身体はとことん疲れていて節々がギシギシと痛んだ。

…風呂でも入るか。

きっと、こんな日中に風呂に入るやつなんか少ないだろうし、とりあえずさっぱりしてこの疲れを取りたい。

そうと決まれば行動は早い。

早速着替えを持って立ち上がる。

…そう言えば、結局あの後ヴィクトルと勇利はどうしたんだろうか。

…

…愚問だ。

きっと僕はだいぶ疲れてるな。

うん、そう、きっとただそれだけ。

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脱衣場へ行くと、予想していたとおり誰も居ないようだった。

ここへ来る間も誰とも出会わなかった。

宿屋ホテルなどは大抵夜に忙しさのピークを迎えるから、この時間は働いている人も少なく、いわゆる休憩時間なのだ。

そんな時間が僕にとっては心地いい。

周りに気を使わずにリラックス出来る。

…僕は衣類を脱いでいく。

上着、Tシャツ、靴下…

そして、最後にこのマフラー。

…この瞬間がいつも憂鬱で仕方ない。

見たくない、だけれど必ず見てしまう。

…マフラーをとる。

脱衣所にある大きな鏡に、僕の全裸体が写し出される。

そしてそこには痛々しいその傷痕も。

丁度、マフラーで隠れていた首。

左手でその傷痕をなぞる。

触るとよくわかる。

見た目もそうだが、禍々しくて大怪我だったといえるその傷は、まるでマンガで描かれるうにそこだけ皮膚が引きつっている。

流石にこの怪我を負ったのは何年も前のことだから痛みも何も無いけれど、逆にその場所だけ触れられていると感じなくなった。

いわゆる感覚麻痺というやつ。

医者によると神経がどうのこうのと言っていたけれど、僕のごく一般的な頭脳では理解不能だ。

それに感覚がなくなったからと言って何か不祥事が起こるわけでもない。

せめてこの傷痕はどうにかしたいけど。

…絶対に、他人には見せたくない。

だから片時もマフラーを離さずに身につけている。

…でも、1度勇利に聞かれたことがあったかもしれない。

問い方が遠回しだったから気にしてなかったけど…勇利はこの傷の事を知っているのかもしれない。