【ユーリ!!! on ICE】a ray of hope【男主】 (ページ15)

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第十二滑走 the past ページ15

～Aside～

…その日は、僕のシニアデビュー戦だった。

僕は、このフィギュアというスポーツの中では遅咲きで、始めるのだって僕が6歳の頃だった。

勿論、その数年の差は直ぐに埋まるわけもなく、僕は人1倍スケートに時間を注いだ。

高校ではスケートを少しでも長く練習するため家から一番近くて期末事に行われるテストで単位さえ取れれば大丈夫という通信制の高校にした。

他の名門学校にスポーツ推薦という形もあったけれど、何より僕のそばには父というスケートを教えてくれるコーチがいたし、そんな父のおかげで僕は生活や金銭問題では全くと言っていいほど気にしなかった。

フィギュアはとてもお金のかかるスポーツだ。

特に成長時期の僕達は。

シューズは自分の足にあったものでないと、滑りにくいのにプラスして大怪我になりかねない。

その為、ひどい時なんて1ヶ月でシューズを交換しなくてはならない事もあった。

リンクを使うのだってタダではないし、衣装代、メンテナス良品、コーチ代、録音録画用の機器…

とにかく、沢山のお金を動かすのは間違いない。

でもその時の僕は、ただひたすらにスケートをやっていた。

それがライバルに追いつきたいからなのか、スケートを上手くなって父を見返したいからなのか、純粋にスケートをする事が好きだったのか…それは最早分からない。

…でも決して楽しいものじゃなかったかな。

何度も転んだせいで全身はアザだらけ。

硬いフィギュア用のシューズをずっと履いているせいで足の皮は剥けるし、たまに爪が剥がれたりした。

筋肉痛なんて度じゃなく、筋肉を動かすのにも、ただ歩くだけでも激痛が走った。

疲労骨折も、一体何回なったのだろうと思う程に、しょっちゅうなっていた。

…だが、そんな肉体的疲労は直ぐに慣れていった。

人間の慣れとは恐ろしいもので、それがたとえ自分の命を危うくするものでも、それが当たり前になる。

…そのおかげもあってか、17歳でのシニアデビューとなった。

結局、ほかの選手とは1歩遅れをとる事となったが、何よりの努力値は確実に僕の方が上だという自信があった。

…遊び半分でやってるお前達に負けるわけがない。

今思うと、多分僕はこの時から、もう既におかしかったんだと思う。

僕の世界は、フィギュアスケートとコーチの父だけで形成されていた。

それが僕のいる道なのだと、歩かなくてはならない道なのだとずっと思っていた。

僕にとって、スケートこそ全てだった。