【ユーリ!!! on ICE】a ray of hope【男主】 (ページ13)

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第十滑走カレはカレページ13

…本当に彼はAなのか？

そんな問さえ出てきそうな程だ。

そして何より違うのはその言葉遣いだった。

…昔はお互いタメ口だったじゃないか。

何より、昔はファーストネームで呼びあっていたのだ。

それが、まるで初対面化のように“貴方”と呼ばれるなんて。

あの頃とは違う、声変わりをし終えた記憶より一段低い声。

その声は氷のように冷たく感じる。

｢…もう“ヴィクトル”とは呼んでくれないのか｣

無意識のうちにそう呟いていた。

あっと思った時にはもう遅くて、カレの顔を見上げると、一瞬だけ瞳が揺れて顔を顰め、目をそらされる。

その瞬間、“あぁ、オレは完璧に嫌われたんだな”と思った。

何かあると顔をそらすのはカレの昔からの癖だ。

言いたくない、関わりたくない…そんな単純な拒否反応。

それがオレに向けられる時が来るなんて…

心が濁った渦を巻く。

嫌われたくない、Aと一緒にいたい、離れたくない、オレだけのAであってほしい、全て話してほしい、
そんな独占欲にも似た感情に飲み込まれそうになって息苦しさが増した。

…どの位の時間が経ったのか分からない。

気づけばオレの目の前に座ってAはカツ丼を食べていた。

吐き気にも似た黒い気持ちも、その時にはもう大分落ち着いていて、オレは意外にも冷静だった。

Aを見る。

ユーリと楽しそうに話すAの顔は、昔オレに向けられていたものに似ていた。

…ユーリとは普通に話せるのに、何故オレはダメなんだ？

…一向に目すら合わせてくれない。

黙々とカツ丼を食べている。

…本当に、昔からキミはオレを困らせるのが得意だな。

オレはこんなにもAのせいで取り乱しているというのに…

昔っからそうだ。

オレは何度もAから振り回されてきた。

待ち合わせの時間を間違えていたり、財布をホテルに忘れてたり…今ではただの笑い話だが、そんな事がある度にオレはハラハラしていたものだ。

…それに、突然居なくなった…

そう、カレは居なくなったのだ。

誰にも知らせずに。

そして感動の再開がこの結果だ。

感動でもなんでもない。

ただただキミが変わってしまって、オレは訳も分からずに嫌われている。

こんな展開、幾ら内容の薄いティーンズ向けの恋愛ドラマにだって無い。

普通はここで｢〇〇年ぶりだね｣とかなんとか言って抱きしめ合うのがメジャーだろう。