【ユーリ!!! on ICE】a ray of hope【男主】 (ページ12)

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第九滑走これは現実ページ12

～ヴィクトルside～

…まるで夢かと思った。

｢A、おかえり!!｣

と突然勇利から発せられた言葉に反応し、顔をあげた。

｢…た、ただいま。
…ってか、勇利こそおかえり｣

…そこにいたのは、紛れもないA。

…まさか。

オレはあまりの衝撃に思考が追いついていかずフリーズしそうになる。

カレと丁度目が合うと、彼は面食らったような顔をしていた。

まさか、オレがいるとは思っていなかったのだろう。

オレだって、Aがいるだなんてこれっぽっちも思っていなかった。

｢…A？｣

そう、口にして出せば尚更、今の状態が本当に現実なのかと疑念してしまう。

予想もしなかった、偶然にしてはなんて出来すぎた運命なのだろうか。

あんなにも逢いたかった、Aが目の前にいる。

それだけで、ずっと心の中に溜まっていた彼への想いが溢れ出そうだった。

今すぐにでも抱きしめて、オレの腕の中でカレの存在を確かなものにしたかった。

そんな事を思うオレとは裏腹に、カレは鬼胎(きたい)を抱いているかのように、目を逸らし俯く。

…カレの表情が見えない。

それが、今のオレにはどう使用もなく不安になった。

｢…Aだよね？｣

オレはいてもたってもいられずに2度目の声をかける。

しかし、帰ってきた言葉はこれまた予想もしないようなものだった。

｢…だったら何？｣

冷たく言い放たれた短い言葉。

それは昔のAからは想像もつかない、冷たいものだった。

恐怖に似た感情が、オレの中に芽生える。

｢ってか、なんで貴方(、、)がいるのか知りませんが、僕はただ挨拶をしに来ただけです。
僕にはもう関係のないことなので。｣

抑揚のない、感情の見えない言い方だった。

一体今まで何があったのか、今すぐ問い詰めたかった。

カレは紛れもないAだ。

それは事実。

しかし昔と比べてオレが思っている以上にカレは変わりすぎていた。

…見た目だってそうだ。

昔から彼は日本人の中でも華奢な方で体のラインが細かった。

肌だって白くて透き通るようで、それに少しブラウンがかった柔らかそうな髪の毛。

それをサイドを長めにしていた。

ピンク色の唇は桃の花弁のようにとても映えて、カレを見る度に美しいと思った。

だが今はどうだ。

痩せすぎた身体にら病的と言ってもいい様な肌の白さ。

あんなにも艶やかだった髪の毛は無造作にもボサボサと伸ばされていて、せっかくの美しい顔を隠している。

全体的に血色も悪い。