【ユーリ!!! on ICE】a ray of hope【男主】 (ページ11)

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第八滑走変わらないモノページ11

あぁ、きっと今僕の顔は真っ赤になってるだろう。

こんな顔は誰にだって見せたくはないのに。

顎に添えられたヴィクトルの細い綺麗な手のせいで顔を逸らせないじゃないか。

ヴィクトルには、今の僕がどう見えているんだろう。

こんなにも恥ずかしい気持ちになったなのはもういつぶりか分からない。

｢…久しぶりだね｣

先程とは違った、まるで僕を優しく宥めるように彼は言った。

｢本当に驚いたよ、まさかキミが勇利と一緒に住んでいるなんて思ってもいなかった…
…ずっと、キミを探していたんだ｣

一つ一つ…割れ物を扱うかのように大切に言葉を並べる。

僕を優しく見つめる彼の表情。

僕のことを気にしてくれているんだろうが、

…なるべく刺激しないように…

彼の言い方にそんな印象を持ってしまった。

きっと昔の僕だったら、こんな歪んだ考えも皮肉じみた思いも持たないで、純粋に今の言葉を受け止めることができただろう。

そうできないのは、ただ単に僕が昔の僕(、、、)とは違うから。

ヴィクトルが言ってるのは僕じゃなくて昔の僕に対してだろう？

貴方の思っている“A”はもういないんだ。

｢…貴方は何も変わってないんですね。
そうやって人を魅了する仕草も、優しさも、表情も…何一つ昔のままだ｣

僕だけが変わってしまった。

汚い色に汚れてしまった。

綺麗な世界に、僕だけが汚物として醜く存在しているようで嫌になる。

もう彼とは立つ場所が違うのだ。

そう思うと、先程まで恥ずかしくて熱かった体温も、何か変えてくれるんじゃないかという安易な希望も…全てが一瞬の空想だったような気になった。

｢…僕は違う。
もう“A”はいないんだ｣

顎に添えられていた手がピクリと動くのと同時に、彼の瞳も微かに揺れた。

｢ごめん…僕は戻れないんだ｣

気づけば、僕の腕を掴んでいたはずの手には力がほとんど入っておらず、簡単に彼から離れることが出来た。

彼に触れられていた部分が外気に触れると冷たく感じて、一瞬にして、僕は独りなんだと実感した。

僕はずっと独りで歩いていくんだ。

これまでもこれからも…それはずっと変わらない。

部屋から出るとより一層気温が低くて、身震いした。

明かりの中に残されたのはヴィクトルと勇利の2人。

…光を浴びるのは2人だけで充分だ。

僕は暗い廊下を部屋へと向かって進む。

…部屋へ入る時、僕はポタりと涙を一滴こぼした。