inverse

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抱きしめて、ポンポンって頭を撫でてると
少しずつ
ほんの少しずつ
Aの体から力が抜けて

俺に身を預けて


「正反対で、ずっと交わることがない人だ
って思ってたけど

私達…似てるのかも知んないね
陰と陽
光と影みたいに
正反対みたいで
実はそっくりなのかも…」


何て言いながら
俺の背中をポンポンって叩いて

ふっと緩めた腕の間から俺を見上げると
まだ涙をたっぷり含んだ瞳で
フワって笑って



「でも、ここ行きつけのお店(笑)
恥ずかしくて来れなくなるから

離して(笑)」


って声に周りを見ると
客のおじさんやさっきのおばさんが
ニヤニヤ笑いながらこっちを見てて


思わず苦笑いする俺に


「うちはいいのよぉ〜

また、いつでもおいで
待ってるから

うちのお客はみ〜んな口は堅い義理がたぁいのばっかだから
心配もしなくていいよ(笑)」


って俺の背中をバシっと叩いて


「でもね、そろそろ帰らせてあげな？
あれ以上飲ましちゃダメだよ

体壊しちまう」


って座りながらフラァっと揺れてるAを
心配そうに見てた


「おばちゃん、ありがとう
これ…」

「ん。まいどあり(笑)

Aちゃんさ、幸せになって欲しいんだよ
おばちゃんは」


って意味ありげにウィンクして
もう一度背中をバシっと叩かれた


「A？帰ろっか」

「ん〜
もうちょっと…」

「俺が、付き合うから。
ほら」


って出した手のひらに
ちょこんと乗せられた手を両方握りしめて立たせると


スポンって俺の胸に収まって


ヒュゥゥゥッ♪


なんて声を上げるおじさんたちに
何故か片手を上げながら
上手く歩けそうもないAの腰を抱いて
店を後にした


「寒っ」


真っ暗に染まった空気は
入った時よりずっと冷たくなってて
空気が冷たい分
Aと触れ合っているところが暖かくて

そこからAの優しさが染み込んでくる気がして

タクシーも見つからない
薄暗い道を
2人くっついて歩きながら


「俺…Aの事好きなのかも(笑)」

「ダメだよぉ〜、恋しないんでしょ？
私もしなぁい」

「だけど、好きになるのは、止めらんないだろ？」

「私に好きになられると
重ぉいよぉ(笑)」

「俺も重いよ(笑)」

「溺れるくらい苦しいよぉ〜」

「溺れさせてよ」

「本気？」

「本気

なぁ、俺たち…付き合ってみよう？」

「お試しで？」


は？
なんでお試し？


あぁぁぁ！


もう、それでもいいや


「…お試しで」


Aを引き寄せて
唇を重ねた

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