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思えば何でも中途半端だった。
人との付き合い、バイト、大学、家族との関係。
どうでもいいと思っていたのが原因かもしれない。
自分とは関係ない、どうでもいいんだ、そんなことって、どこかで思っていたのかも。
自分がいなくても誰かがいる。どこにでも私に代わる誰かが、私の代替品があるから。
私はいらないから、だからどうでもいいと思えた。
でも今回は違った。この家には、テヒョンのほかには私しかいなかった。
今テヒョンが頼れるのも私だけしかいなかった。
私が分かっていなかったんだ。
今回テヒョンを悲しませたのは、私のそういう中途半端さにすべての非がある。
"守るべきものがいると、生活変わるよな"
ユンギさんの言葉を思い出した。
そっか、私にもできたのか。守るべきものが。
変わらなきゃ。私が。
「……ぼくね、どんなに痛いことされてもね、きらいになられるのがすごく怖かった」
抱きしめあっている私の耳元で、テヒョンが落ち着いた静かな声で言った。
泣いたせいか、まだ少し鼻声だけど、でも不安さはもう滲んでいなかった。
「だから一番最初にぼくを買ってくれた主人の人が、ぼくがいやになって、お店に売られたとき、すごく悲しくて、それで怖くて、毎日泣いてた。でもお客さんの前で泣けないから、夜になって泣いてた」
「……そっか」
「うん。これからは、もう売られない、きらわれないようになるんだって決めた。だからお祖父さんのお世話も、すごく考えて、頑張った。こんなに頑張ったことないってくらい頑張った。そしたらお祖父さんは死んじゃった。でもこれは仕方ないんだ、お祖父さんはずっと病気だったから」
とつとつと話すテヒョンは、決して話が上手だとは言えなくて、でもすごく、耳を傾けたくなる。
聞いていたい、聞かなきゃいけない、この人の声を。
そんな気分にさせた。
「でもお祖父さんはAを残してくれたから、大丈夫、まだ一人にならないって思ってすごく嬉しかった。また考えて、頑張ろうって思った。
でも今日、起きたらいなくて、どこ探してもいなくて。Aの持ち物とか荷物とか探して、なにか手がかりないかって探したけど、何もなかった。
ぼく、またきらわれたって、頭に浮かんで、どうしようって焦って、また泣いた。ごめん」
「謝るのは私だよ。もう悲しい思いさせない。何があっても私がテヒョンのこと守るから」
テヒョンははっと息をのんで、また鼻をすすった。
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ミョンファ(プロフ) - すんしむさん» コメントありがとうございます!続編も更新頑張ります^^ (2016年12月27日 23時) (レス) id: 587a0a36a9 (このIDを非表示/違反報告)
すんしむ - すごいおもしろいです! それでは、続編今から行ってまいります! (2016年12月27日 10時) (レス) id: c07ed66232 (このIDを非表示/違反報告)
ミョンファ(プロフ) - ふぅかさん» ありがとうございます!これからもはっちゃけて更新頑張ります! (2016年12月24日 0時) (レス) id: 587a0a36a9 (このIDを非表示/違反報告)
ふぅか(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!!、この後の展開がとても楽しみです!頑張って下さーい! (2016年12月24日 0時) (レス) id: 2c1116535e (このIDを非表示/違反報告)
ミョンファ(プロフ) - はばななさん» ありがとうございます!ペットのほうも読んでくださったのですね、嬉しいです。小説大好きと言ってくれることが何より励みになって、もう感動してます…これからも頑張ります! (2016年12月12日 7時) (レス) id: af06c6e6f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミョンファ | 作成日時:2016年12月7日 17時