35 ページ35
.
私は自分が着ていたコートをテヒョンに着せて、リビングに急ぐ。
驚くべきことにリビングには電気さえ点いていなかった。やっぱりずっと玄関先で待ち続けていたんだ。
そしてリビングのソファにテヒョンを座らせた。
まだ熱はあると言っても、テヒョンの体から震えが止まらない。
すぐにエアコンのスイッチをいれる。設定温度も高くする。
そうだ、お風呂に入れば手っ取り早く温まるよね……。
肩掛けカバンをその辺に放り出して、風呂の方へ走ろうと思ったその時、手首をものすごい力で掴まれた。
腕が抜けそうになった痛みで、一瞬顔が引きつった。
そして掴んだ手は、まるで冷たい水につけた金属のようだった。
「どこいくのっ…！？」
不安そうに眉をひそめたテヒョンが、なおも私の腕を強く引く。
そう、か……まだ、不安なんだ、よね。
「テヒョナ、寒いでしょ、だからお風呂沸かそうかって、」
「何もしなくていいよっ、寒いのも平気だから！どこにも行かないで、ここにいて……」
慣れてない。こんなに不安がられることも、一緒にいてって求められることも。
困ったな、どうしたらいいのかな、こういうときって……。
私はテヒョンの隣に、貼りつくように座った。
どうしても体が冷えてるのが気になる。少しでも温まるように、私のコートがかかっているテヒョンの背中を撫でる。
「ごめんね、寒かったよね」
「寒いなんて、どうでもいいよ。それよりAが、帰ってこなくて、暗くなっても帰ってこなくて、なにかあったのかなって……それかぼくが嫌いになったんじゃないかって、思ったの」
「嫌いなんて、嫌う理由なんてないよ……」
「よかった……ぎゅってしてもいい？」
テヒョンは私の背中を撫でていない、あいている手をしっかりと握りながら言った。
でもしっかりとした手の力とは似ても似つかないくらい、視線は彷徨っている。
拒否されるのが怖いんだとすぐに分かった。
そうだよね、私にもあるよ、そんな気持ち。
拒否されるのは嫌、だから目を合わせる自信がない。
でも一人でいるのも嫌。わかるよ。
私は返事をする前に、手のひらを背中からそっと後頭部に移して、そのまま自分へと引き寄せた。
痛くないように……。
テヒョンは重力がかかっていないみたいに、ふわりと軽くこっちへ来た。
「A……」
離しちゃ、おざなりじゃだめなんだ、彼だけは。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 625人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミョンファ(プロフ) - すんしむさん» コメントありがとうございます！続編も更新頑張ります^^ (2016年12月27日 23時) (
レス) id: 587a0a36a9 (このIDを非表示/違反報告)
すんしむ - すごいおもしろいです！ それでは、続編今から行ってまいります！ (2016年12月27日 10時) (レス) id: c07ed66232 (このIDを非表示/違反報告)
ミョンファ(プロフ) - ふぅかさん» ありがとうございます！これからもはっちゃけて更新頑張ります！ (2016年12月24日 0時) (レス) id: 587a0a36a9 (このIDを非表示/違反報告)
ふぅか(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです！！、この後の展開がとても楽しみです！頑張って下さーい！ (2016年12月24日 0時) (レス) id: 2c1116535e (このIDを非表示/違反報告)
ミョンファ(プロフ) - はばななさん» ありがとうございます！ペットのほうも読んでくださったのですね、嬉しいです。小説大好きと言ってくれることが何より励みになって、もう感動してます…これからも頑張ります！ (2016年12月12日 7時) (レス) id: af06c6e6f1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ミョンファ | 作成日時：2016年12月7日 17時
