嘘つきと素直とわたし (ページ33)

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呼ばれた名前に振り返ると、

「岩田さん」

岩「下で咲希ちゃんに会って、Aちゃんならまだ上にいるって聞いたんだけど…、Aちゃん？」

岩田さんがこっちに歩いてきて

わたしの頬に手を添える

岩「どうしたの？…泣いてる」

「え？」

流れた涙を岩田さんが指で拭ってくれた

わたし、泣いてたんだ

「…ごめんな、さい。なんでもないです」

岩田さんは困った顔で少し笑って

「そっか」と呟いた

岩「じゃあ家まで送って行くから、もう帰ろう？」

それからの帰り道

岩田さんは何事もなかったかのように話してくれて

自然と笑顔になる

やっぱり岩田さんといると、心があったかくなる

きっと何も聞かないのがこの人の優しさなんだと思う

「ここ、です。本当にわざわざありがとう、岩田さん」

岩「俺がしたくてしたことだから、今日も話せて嬉しかったよ」

「じゃあ、ま… 岩「Aちゃん」

一瞬で手を引かれて、岩田さんの腕の中に閉じ込められる

岩「Aちゃんが笑ってると俺も嬉しい

だから、泣いてたら俺も悲しい」

いつもより近くで感じる声にドキドキして、黙ってその声を聞いていた