story of love ７

春が来たら思い出してね ２ ページ38

side.桃
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桃「昨日は来れなくてごめんなぁ、ちょっと仕事でトラブってん」





もちろん、返事は返ってこない。








桃「大毅は営業の仕事とか似合いそうやなぁ。人懐っこいから先輩ともめちゃめちゃ仲良くしてそうなイメージあるわ」





シュー、シュー、とチューブの先端から酸素の出る音がする。







大毅の生きてる証。 大切な音。









桃「…もう何年目なんやろうなぁ、こうして大毅と桜見るん」





酸素の音と、俺の声しか響かない病室はやっぱりどことなく寂しい気持ちになる。







まぁ、そりゃあそうやな。









桃「やけど、大毅の夢は一応叶ってるんやで？」





そう、あの時の。









桃「大毅、言うてたやんな？ 形はどうであれ、ずっと俺と一緒におれたらそれでええって」






さわさわと春の雰囲気を纏った風が、大毅と俺の髪を揺らす。









桃「ほら、今年も一緒におるよ」






風に乗ってどこからか運ばれてきた桜の花びらがそっと大毅の上に舞い降りた。









桃「ふふっ、ラッキーやな？ 大毅 、」






桜の花びらと大毅の肌、どっちが白いんやろう？





なんて、おかしなことを考えながら大毅の頭を撫でる。







さらさらで 、 ふわふわで 。









桃「来年も一緒に見ような、桜」






少し寒さを感じて、窓を閉めた。









桃「来年はここからやなくて、もうちょい近くまで行きたいわぁ… 大毅もそう思うやろ？」







大毅は相変わらずよく眠っている。





もう何年も何年も眠っている。








どんな夢見てるんやろう。





果たして大毅の見てる夢に俺は存在してるんやろうか。







やっぱり大毅のことは昔からよう分からへんかったけど。









桃「来年も、楽しみにしてるな。 …まぁ、ほとんど毎日会いに来ると思うけどな」







毎日毎日、俺の夢を見てほしいなんて願わないから。





せめて









大毅と俺が初めて友達になった春だけは





やっとやっと恋人同士になれた春だけは







俺のこと思い出してほしいなー、なんて。









桃「ほなまた明日な、大毅」






たとえ春が終わって、また新しい別の季節がやって来たとしても俺はずっと大毅に言い続けるんやろうな。









桃「また春が来たら思い出して」





ってね。



(END)

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