女として ページ35
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「三崎さんって、お姉ちゃんの彼氏なんですか？」
――――麻結は言った。
岩塩をまぶした肉を噛み切り、丁寧に咀嚼してから――対面に座る男を見やって首をかしげる。
長い睫毛がまたたいていた。
姉はまだ、トイレから戻ってきていなかった。
「……そう見えた？」
三崎は答える。
泡の消えたノンアルコールビールをなんでもないふうに眺めながら、しかし麻結の視線を意識していた。
――――彼女にこんなにきれいな妹がいるとは思わなかったのだ。
あの、小さな人形のような不思議な彼女に。
「お姉ちゃん、全然教えてくれないんですよ〜。恋バナなんかもうさっぱり。
それに、わたしですらわからないことがいっぱいあるんです。
お姉ちゃんとはすっごく仲が良いけど、なんかこう、思考が危なっかしいというか。……いつも心配してるんですけど」
店は依然騒がしかった。
濃い煙が充満している。
服、クリーニング出さなきゃな――――麻結は考えながら、タレを突ついていた箸を置いた。
「だから恋人の前とかだったらもっと安定してるのかな〜って思ったんだけど……
ね、三崎さんは彼氏じゃないの？お姉ちゃんのこと、好きなんでしょ？」
三崎の目が揺れる。
ビールで満たされたグラスの壁を、ぬるい水滴が滑り落ちていく。
「………………いや、
仲が良い同僚って感じだよ」
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シャワーを浴びながら、わたしは全身を確認していた。
鎖骨、胸、肩、二の腕、腹、太腿。
濃く刻まれていた鬱血痕はもうほとんどが消えかけている。
「うわ、何これ男？」
以前寝た男に、そう言って気味がわるそうに見られたことを覚えている。
そのくらいの数と、濃さだった。
まるで執念でも込められているかのように、あの夥しい数の歯型は、わたしの肌深くに食い込んでいたのだ。
「……ああ、でも、付けたくなる理由もわかるかも」
だけど終いには、その男はわたしの身体に散りばめられたそれをなぞりながら、そんなことをつぶやいた。
一度きりではもったいない、と。
「また会ってくれる？」
勿論、二度と会うつもりなどない。
……すこし太ったかな。
骨だけにならない程度の、しなやかな身体。
女であるために磨いた身体はしかし、麻結と比べて粗がある。
ただ白いだけの肌。
小柄で、長くはない手足。
「…………痩せよう」
その日は何も食べず、さっさと布団に入り眠った。
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べに(プロフ) - 516516516tさん» こちらのほうも…！本当にありがとうございます(T T)双子とはまったくテイストが違いますが、これからもよろしくお願いいたします！ (2018年9月28日 0時) (
レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
516516516t(プロフ) - 双子と共にこちらも読んでいます！ (2018年9月26日 21時) (レス) id: 06c5e90194 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べに
| 作成日時：2018年9月11日 21時
