ルージュの仮面 ページ34
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しばらくして、麻結がやってきた。
彼女は肩の開いたブラウスに細身のスキニーという、長い手足の際立つ格好をしている。
やっぱり妹は特別にかわいい。
わたしを見つけてうれしそうに笑う顔も、手を振る仕草も、ほんとうにかわいくて仕方ないのだ。
「お姉ちゃん！」
麻結はわたしのとなりにさっと腰を下ろすと、その長い腕を首に絡めてくる。
外で会ったとき、彼女はいつもこうする。
今朝も顔を合わせたのに、まるで何年も会っていなかったかのように。
「もー！デート中ならそう言ってくれたらよかったのに！」
「ごめん……麻結、も、くるしい」
わたしたちを見て、三崎さんはびっくりしたように目を丸くしている。
姉妹のようすにも、麻結のあきれるほどきれいな顔にも、おそらく両方におどろいているのだろう。
「はじめまして、水無月麻結です！」
「はじめまして……三崎柊介です。サッカーやってます」
「へー！選手なんですか？じゃあお姉ちゃんとは部活関係で？」
「まあ、そんな感じかな？実際出会ったのは学校だよね、たまに顔出してるから」
同意を求めるようにこちらを見る彼に、わたしはうなずいて答えた。
「すごいなあ。わたし、お姉ちゃんと違ってスポーツあんまりわかんないんですけど、ワールドカップとかは見ますよ！」
「そうなんだ。いいね」
懐っこい麻結はそれからも話題を重ね、感心したり、おどろいたり、コロコロと表情を変えている。
明るくて、かわいくて、そして何より『あいされている』という自信に満ちあふれているのだ。
わたしはそんな妹が誇らしく、羨ましく――――妬ましい。
わたしがどう足掻いても手に入れられないものを、彼女はなんだって持っているのだ。いつでも、どんなときでも。
鞄の底でスマホが鳴っていた。
画面には、数字の羅列だけが浮かび上がっていた。
登録していない番号。
だけど見覚えのある番号。
わたしはそれの電源を落とし、水を飲み干してから席を立つ。
「お手洗い行ってくるね」
鏡の前に立ち、口紅を引いた。
いつも欠かさず持ち歩いている、それは真っ赤なルージュだった。
食事をしたせいでグロスは剥げ、元々塗っていたネオンのピンクは、毒々しいほどの緋色に容赦なく打ち消された。
「…………」
鏡の中からばかみたいに淋しい女が睨んでいる。
強気な目で、傲岸さを持って、まるで泣いているように睨んでいる。
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べに(プロフ) - 516516516tさん» こちらのほうも…！本当にありがとうございます(T T)双子とはまったくテイストが違いますが、これからもよろしくお願いいたします！ (2018年9月28日 0時) (
レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
516516516t(プロフ) - 双子と共にこちらも読んでいます！ (2018年9月26日 21時) (レス) id: 06c5e90194 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べに
| 作成日時：2018年9月11日 21時
