まっすぐな好意 ページ32
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「水無月ちゃんってさあ」
昼休み。
おにぎりを食べていると、おもての図書室から画用紙を取りにこちらに戻ってきた小川さんが、にこにこと笑いながら話した。
「プライベートはどうなの？恋とかしてる？」
「……いえ」
「あら勿体無いわねえ。こんなにかわいらしいのに」
おそらく、生徒たちの『恋バナ』でも耳にしたのだろう。
彼女は『青春』や『胸キュン』といったワードにとても敏感だ。
「ぶっちゃけけっこうモテるでしょ？」
「全然、そんなことないです」
一瞬、三崎さんの顔が頭に浮かんだ。
あんなふうにまっすぐな好意を向けてくれる人は、ほとんどはじめてに等しかった。
肉体関係を持たない男性の知り合いは、わたしにとってごく数少ない。
放課後、片付けなければならない仕事があったためすこし遅れてグラウンドに向かうと、生徒たちに混じり、三崎さんが練習に参加していた。
軽快なドリブル、その足捌きを盗もうとして、部員みんなが彼に注目した。
サッカーをする彼はほんとうにたのしそうで、高校生みたいだった。
「Aさん、おつかれ」
ほつれたビブスの番号を縫い直していると、休憩に入った三崎さんが近づいてきた。
彼は、もうすぐ復帰できそうだと言う。
膝を動かしてみせ、ほら、とうれしそうに。
「よかったね」
大好きなサッカーに戻れてよかったね――――心から告げると、ふと、おどろくほど丁寧に髪を撫でられた。
「ありがとう」
見知らぬ男に抱かれている瞬間が好きだ。
わたしはわたしのすべてを、決してだれにも見せたくなかった。
だれかに依存することも、特別な感情をもって接することもしたくなかった。
弱くなりたくなかった。
強く、自由な女でありたかった。
三崎さんは男女というフィルターを持たず、たぶん、わたしをひとりの人として見てくれている。
そのことが、わたしの心をすこしだけオープンにさせるのだった。
たまに考えるのだ。
このひとはどんなふうにわたしを抱くのか、と。
その週末は、中間テストの準備期間だった。
部活動の休止で珍しく休日が１日空いており、誘いを受けたわたしは、以前から約束していた三崎さんとのデートに出かけた。
映画を見て、メロンソーダを飲んだ。
おしゃれなカフェでランチを食べ、にぎやかなショッピングモールをあてもなく歩いた。
なんでもないふうを装って、手を、つないだ。
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べに(プロフ) - 516516516tさん» こちらのほうも…！本当にありがとうございます(T T)双子とはまったくテイストが違いますが、これからもよろしくお願いいたします！ (2018年9月28日 0時) (
レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
516516516t(プロフ) - 双子と共にこちらも読んでいます！ (2018年9月26日 21時) (レス) id: 06c5e90194 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べに
| 作成日時：2018年9月11日 21時
