痛くて、奇妙な ページ26
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妹はチョコレートを食べながら、コーヒーと雑誌を片手に時々テレビに視線を止めている。
思えば、彼女はいつもこんなようすだ。
わたしが大学進学のため、ひとり暮らしをしていた二年間。
その後麻結の専門学校進学で同居がはじまったときにはすでに、彼女はこのアイドルグループにはまっていた。
ファンクラブに入り、コンサートにはよく足を運んでいるみたいだけれど。
わたしが芸能人に興味のないことを知って、遠慮しているのだろうか。
彼女がわたしに彼らの話をすることはほとんどなかった。
奇妙な気分だった。
ともに夜へと沈んだ人間が、この四角い画面の中で笑っているなんて。
彼とのことが、なんだかもう遠い昔のことのように思えた。
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夢を見た。
わたしはアスファルトに積もる塵で、殻のない貝で、さなぎからこぼれ落ちた蝶だった。
地べたに、海底に、這いつくばるわたしを、ふたつの宝石がまっすぐに射抜いていた。
吸い込まれてしまいそうで痛かった。
軽くて、無防備で、とっくの前に飛ぶことをあきらめたわたしは、逃げ出すことすらできなかった。
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チャイムが鳴る。
図書準備室のデスクに持ち込んだパソコンで、この前見た奇妙な夢を参考に短い話を書き上げた。
ふと外を見ると日が照っていて、まぶしい。
わたしは山積みになった仕事を終わらせるべく、傍らの資料に手を伸ばす。
「あら水無月ちゃん、寝不足？」
「いえ……ちょっと、疲れてるんですかね」
「たまにはパーッと遊んでストレス発散することも大事よ？教師は聖職者だ、なんて古くさいこと言う年寄り連中は無視していいんだから」
小川さんと話をしながら、いつもより味の濃いコーヒーを飲み干した。
今日はなんだかとても眠い。
頭を使ったからだろうか。
――――心を削ったからだろうか。
馴染みのミルク色を揺らし、コンビニへ向かう。
珍しく食欲を感じなかったが、午後からは２コマ連続で授業をしなければならない。
ちいさめのお弁当を選び、あたたかいレモンティーに手を伸ばそうとしたそのとき、
「っ……」
背後から、ぐっと掴まれた、手首。
わたしの白いそれを握る、ごつごつと骨張った、小柄な。
「久しぶりやな」
ぼそ、と。
耳のすぐそばでささやかれた声を、聞かなかったことにすることはできなかった。
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べに(プロフ) - 516516516tさん» こちらのほうも…！本当にありがとうございます(T T)双子とはまったくテイストが違いますが、これからもよろしくお願いいたします！ (2018年9月28日 0時) (
レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
516516516t(プロフ) - 双子と共にこちらも読んでいます！ (2018年9月26日 21時) (レス) id: 06c5e90194 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べに
| 作成日時：2018年9月11日 21時
