ぬるい気配 ページ25
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昼下がりのぬるい気配の中、家に帰る。
手を洗い、濡れた手のまま冷蔵庫からキウイをふたつ取り出した。
皮もむかずにかぶりつけば、ぺこぺこだったお腹は徐々に満たされていく。
果汁でべたついた指をなめ、スマホを操作すると、先ほど届いたばかりのメールをもう一度確認する。
【今度、デートしませんか】
三崎さんは不器用なひとだ。
からかわれて苦笑いを浮かべていた顔を思い出す。
解散後、駅へ向かうわたしのことを何か言いたげなようすで見つめていた。
目が合うと、困ったように眉を下げた笑顔で、気をつけてね、とちいさく手を振ってくれていた。
「やさしいひと」
日がいっぱい当たった部屋で、わたしはアイスキャンディーをなめながらつぶやいた。
アイスは、ホワイトサイダー味だ。
久しぶりに気持ちが安定している気がした。
今なら何か書ける気がして、パソコンを開く。
出版社に、次作には燃え上がるような恋愛ものが欲しいと言われていた。
しかしわたしの恋愛観は、先の２作ですべて書き尽くしてしまっていた。
それでずっと、執筆が止まってしまっていたのだ。
時間を無視して画面をにらんだが、やっと書きかけた数行もやはり消してしまった。
ため息をついてベランダに出る。
夕方の空。
心地のいい空気をからだいっぱいに吸い込んで、すこし散歩に出かけることにした。
ドラッグストアでベビーオイルを買い、たまたま立ち寄ったホームセンターで向日葵の苗をふたつ買って帰る頃には妹が帰宅していた。
オフの妹は今日、学生時代の友だちとランチに行っていたらしい。
彼女はソファでおおいに寛ぎながら、DVDを見ている。
「あ、おかえり」
「ただいま」
たわいのない休日のひとこま。
いつもとちがうのは、テレビの中でにこにこと笑うそのひとを、わたしが知ってしまったことだろう。
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べに(プロフ) - 516516516tさん» こちらのほうも…！本当にありがとうございます(T T)双子とはまったくテイストが違いますが、これからもよろしくお願いいたします！ (2018年9月28日 0時) (
レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
516516516t(プロフ) - 双子と共にこちらも読んでいます！ (2018年9月26日 21時) (レス) id: 06c5e90194 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べに
| 作成日時：2018年9月11日 21時
