あの人を探して三千里【第五人格】

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side 謝必安



今日はとてもいい日だ。


一目惚れした彼女の素顔をようやっと見れたのだ。今まではあのベールの隙間から覗く憂い顔をチラリと見ることしか出来なかったのだ、これで浮かれないわけがない。


「彼女のあの表情、あれもまた良い」


『あまり未亡人を虐めるのは辞めておけ』


「ふふふ、范無咎こそそう言っておきながらあの時追いかけていた時の顔はハンターと言うよりももっと別の顔をしていたと思いますが？」


『………』



相変わらず図星だと無言になるのは昔から変わらないらしい。


クスクスと笑っていると座って何かを真剣に眺めている写真家がふと目についた。


「何を見ているのですか？おや、それは」


「…結婚指輪だよ」


薬指にはまっているその指輪を写真家は愛おしそうにそっと撫でる。


「たとえ目に入れても痛くない僕の愛しい妻、あの時君を置いていった事を今でも後悔しているよ」


「貴方にもそんな存在がいたのですね」


「……以外かい？そうだね、彼女の時間という概念を写真に入れるくらいには愛してるよ」


写真家はそう言うとまた指輪を眺め始める。


これ以上は話しかけるなと言わんばかりの雰囲気を出すので私もそっとしておくためにその場を離れる。



そういう関係の存在がいるということに私は少し羨ましいと思ってしまった。

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