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〜智side〜
辺りに漂う、微かな鉄の臭い。
床にばら撒かれている欠けた硝子の破片。
すすり泣く声。
そして……
｢っ！？翔くんっ！？｣
ぐったりと、和の腕の中で目を閉じる…
｢っ…お…おの…さん…？｣
俺の大事な幼馴染みの姿。
｢翔くんっ！！翔くんっ！しっかりしろっ！！｣
すぐさま、持っていた皿をテーブルに置き
意識を失っている翔くんに駆け寄る。
｢っ…どうして…こんなっ…｣
翔くんの額には、痛々しい血の跡。
カーペットにも僅かなから赤い血痕が
飛び散っていた。
｢何があったっ！？どうして翔くんがっ…｣
黙り込んでいる和の肩をガシッと強く掴むと
顔を一瞬絶望に歪ませながらも
｢っ詳しいことは…後でお話します。
とりあえず今は翔さんを部屋に｣
冷静を保とうと、落ち着いたトーンで
俺にそう促した。
…その瞳は動揺を隠せない様に
グラグラと揺れていた。
一体何が…？
｢…わかった｣
考えるのは後だ。
とりあえず今は…翔くんが優先だ。
｢…僕、救急箱取りに行ってきます｣
翔くんの身体をそっと俺に預けた和は
スッと立ち上がって、戸棚の方に向かった。
俺は翔くんの膝の裏と背中に
素早く腕を差し入れ、抱き上げた。
｢っ…またこんなに軽くなって…｣
以前より、遥かに痩せたであろうその身体は
彼の目に見えない苦労を物語っていた。
目を閉じて、覇気を失った白い顔を見てると
『た…すけて……さとくん……』
あの頃の小さな翔くんの姿と重なって見える。
先程まで呑気に料理をしていた自分を
酷く殴り殺したい衝動に駆られた。
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作者名：星羅
| 作成日時：2017年7月14日 2時
