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〜智side〜
カチッ…カチッ…
何度も何度も。
壁に付いてる大きな時計を見上げる。
あれから、針は…何周したのだろうか。
｢…せんせ〜？にいちゃんまだぁ？｣
｢確かにちょっと遅いわねぇ…大丈夫かしら…｣
いつもなら、17時過ぎには迎えに来てくれる
兄さんの姿は短い針が7を回っても現れなかった。
｢せっかく…にいちゃん、かいたのになぁ…｣
小さい手の平に包まれる1枚の画用紙。
図工の時間にクレヨンで描いた大好きな2人の兄と
母親に囲まれた自分をじっと見詰める。
｢…大丈夫よ。直に来るわよ智くん。｣
画用紙を広げて、寂しそうな表情で
兄を待ち続ける俺の姿を見て。
園長先生はふわっと微笑んで
俺の頭を優しく撫でてくれた。
今、思えば…周囲の他の先生達には
焦りの色が見えていたのかもしれない。
当時、幼かった俺はそんな大人達を
ただ見詰める事しか出来なかった。
刹那。
バンッ______！
｢…っ…園長先生…っ！！｣
｢…何事です？｣
1人の女の先生が勢い良く待合室の扉を開け放った。
この世の終わりの様な…真っ青な顔。
当時の俺は子供ながらにそう感じた。
｢さ…智くんの…御家族が……っ｣
ザァァァ…______
その人の口から紡がれた言葉に
その場の空気が一気に凍りつく。
降りしきる…土砂降りの雨の音。
パサっ______
静かに床に落ちた…1枚の画用紙。
大人達が慌ただしく外に出ていく中。
絵の中の兄さんの笑顔が
何だか泣いている様に見えた。
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作者名：星羅
| 作成日時：2017年7月14日 2時
