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〜智side〜
・
｢ったく…普段ずっと寝てるからでしょ｣
家までの帰り道。
さっきから、冷ややかな目で
翔くんはずっと小言をボヤいていた。
｢だって、授業なんかつまんねぇじゃんら｣
日本史のノートなんて漢字だらけ。
仏像の名前なんて覚えたとこで何に使うわけ？
もはや今となっては美術の
お絵かき帳と化しているだろう。
｢ほんとに赤点１個でも取ったら
俺の家、しばらく泊めないからね！！｣
｢はーっ！？、そりゃねぇだろ！｣
｢んな事言っても知りませんっ｣
こういう時の翔くんは絶対に譲らない。
いつもは何だかんだ俺に甘くても
勉強が絡むと直ぐこれだ。
でも。
｢ん！｣
｢んぁ？何これ｣
翔くんがカバンから何やら数冊の分厚いノートを
おもむろに取り出し、ずいっと手渡して来た。
｢……智くんが居なかった時の分のノート｣
｢え"！？まじで！？｣
想定外の言葉に、急いでそのノートを受け取り
パラパラと捲って見てみると…
日本史や生物に英語。
現代文、古文、数学…
全科目分のまとめの文章達が
隙間なくびっちりと並んでいる。
…すげぇな…
ポイントは勿論。板書だけでなく恐らく先生が
口頭で話した事までも細かく記載されていた。
でも良く見てみると
……なんだこれ…
毛が生えた雪だるまの様な不気味なイラストが
所々に描かれている。
吹き出しのキャラクターのつもりだろう。
｢っ、言っとくけど！！俺だって
眠くならないわけじゃないんだからね｣
…てことは、これは眠気覚ましの落書きってか？
ほんっと、変わんねぇよな
油絵を習ってた人とは到底思えないよね。
月謝の無駄って言って辞めさせておいて
良かったわ。
でも俺は当の本人には、絶対に
"ヘタ"とは言わない。
だって芸術って個性じゃん？
表現として言う時はあっても
美術にウマいもヘタもないと思うんだよね。
それにしても高校生離れした
昔から変わらない純真な絵心に
つい頬が緩む。
｢…なにその顔｣
｢うんにゃ、別に？｣
俺に笑われて拗ねたのか
口を尖らせて睨みつけてくるけど、スルー。
｢あんがとな、翔くん。｣
｢……わかんない所あれば言って｣
ふわふわとした可愛い頭に
軽く手を乗っけると
翔くんは、未だに拗ねた表情で
そっぽを向きながらも
ぶっきらぼうにそう呟いた。
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作者名：星羅
| 作成日時：2017年7月14日 2時
