6. 黒い噂 ページ8
・
「虎杖悠仁、死んだんだってね」
Aは僕を振り向きもせずにそう言った。
部屋に入った一言目がそれって、もう少しなにかないのだろうか。
せっかく時間作って__伊地知が__会いに来てやったのに。
Aは部屋の隅の昔ながらの窓に取り付けてある、低い机のようなものに体を伏せて、座っていた。
窓は書院障子、机は書院甲板というらしい。
昔、何のときだったかAに教えてもらった。
いつも同じ格好だ。
暑い夏でも寒い冬でも構わずに窓を開けて外を見ている。
緑色の着物が床に広がっていた。
「誰かが任務を仕組んで悠仁を殺したんでしょ。特級相手に一年派遣とか、そうとしか思えないよね」
ま、悠仁死んでないけど。
心のなかで舌を出しながら入り口近くで床に正座する。
久しぶりの着物はなんだか落ち着かなかった。
「Aの決定に逆らった奴がいるってことだよね。罰を与えなくていいの?Aなら仕組んだ奴を割り出すぐらい、簡単なことでしょ?」
「罰?なんで?なんで私がわざわざそんな七面倒臭いことしなきゃならないの?」
Aは面白いことを言うな、とばかりに顔を歪めて笑った。
「Aの絶対的な立場を示すために、必要なことでしょ。裏切った奴がいるんだよ」
Aが恐れられているのには理由がある。
神様という自分達とはかけ離れた存在。
圧倒的な権力、そして噂。
自分に逆らった人間を皆殺しにしていった。
死んだ側近の、手でも足でも気に入っていた部分を保管している。
一方的に恋心を持っていた男の愛人を殴り殺した。
エトセトラ。
どこまでが本当のことか分からないけど、呪詛師とはなんら変わりないような黒い噂がいくつもある。
実際、Aが人に罰を与えているところを見たことがある。
「...お前が、それを望んでいるだけだろ」
さっきより一段と声が低くなっている。
...怒らせた。
「可愛い生徒を殺した奴に罰を、あわよくば殺してほしいとか。それを私に押し付けるなよ」
Aは体を起こして壁に寄りかかりながら、不機嫌そうに僕を見つめた。
かと思えば、ふっと小馬鹿にするような笑みを浮かべる。
「そもそも私は、虎杖悠仁を危険と判断すれば殺すという考えで、執行猶予は形だけ。お前が言ったから認めてやったにすぎない」
「どういうこと?」
「上層部の連中には言ってある。虎杖悠仁を殺しても構わない。ただし、事故に見せかけて殺せ、と」
48人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ピエリッタ(プロフ) - こおりさん» コメントありがとうございます!低評価なのはこの作品を上げた際、オリ/ジナルのタグを外し忘れたからだと思います💦挽回できるよう更新頑張りますね! (2022年7月26日 17時) (レス) id: 916fe9a51a (このIDを非表示/違反報告)
こおり - めちゃくちゃ面白いです!! 更新頑張ってください!楽しみにしてます!! なぜ低評価なのかが意味わかりません、、、。 (2022年7月26日 15時) (レス) @page9 id: 7142da3b96 (このIDを非表示/違反報告)
ピエリッタ(プロフ) - 舞さん» コメントありがとうございます!こんなに早くもらえるなんて...!ご期待に沿えるよう頑張ります! (2022年7月21日 8時) (レス) id: 916fe9a51a (このIDを非表示/違反報告)
舞(プロフ) - 更新頑張ってください^_^ (2022年7月20日 19時) (レス) @page5 id: 17ec247796 (このIDを非表示/違反報告)
ピエリッタ(プロフ) - あ、本当ですね!ご指摘ありがとうございます。もう一度ルールを確認しますね。失礼しました。 (2022年7月20日 17時) (レス) id: 916fe9a51a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ピエリッタ | 作成日時:2022年7月20日 17時