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10. ごく自然な殺意 ページ12



僕とAの出会いは最悪だった。


「なんでそんな偉そうなの?雑魚じゃん」


齢五つの小さな僕の言葉に、茶の間が凍りついたのが分かった。


目の前に座るAが湯呑みを弄びながら目を細める。


不老の術式。


六眼が彼女のあらゆる情報を写し出す。


それでも僕はそいつを強いとは思えなかった。


「雑魚か。酷い言い草だな」


Aはおもむろに立ち上がると無駄のない仕草で僕に歩み寄ってきた。


「強さっていうのはね。物理的な力の強さだけじゃあないんだよ。権力、財力、知恵、人材、その人物すべての潜在力、ポテンシャルで強さというものは決まる。分かるかな?
まあ、少なくとも、私は、お前よりずっとずっと強いってことだよ。その証拠に、」


そこでAは言葉を切ると、手に持った湯呑みを傾けた。


中身の冷水を頭からかぶる。


近くの女中が小さく悲鳴を上げた。


「その証拠に、こんなことをされても誰もお前を助けない。反論しない」


空になった湯呑みを手放してふっと笑う。


湯呑みが音を立てて床に転がった。


僕は訳も分からずハクハクと口を開け閉めしていた。


「今日は帰っていいよ。風邪は引かせないように」


Aのその言葉で、その日はお開きとなった。


帰ってから世話係の女に桐ケ谷Aがどれほど素晴らしい人間かを延々と解かれたけど、それでも僕は理解できなかったんだと思う。


話し半分で聞いていると怒られた。


こんなことは初めてだったので少し戸惑う。


しかし次に会いに行ったとき、Aはその日のことを忘れたようにケロッとしていたので少し拍子抜けしたのを覚えてる。






目を開けると目の前に無防備なAの寝顔があった。


日中の絶対王者的な緊張感がまるでない。


年相応の雰囲気を纏ったただの美しい女性。


僕だけが見れる僕だけの特権。


腕の中の素肌を撫でると少しくすぐったそうに身をよじった。


背中に回ったAの細い腕をどかして布団の中から抜け出す。


畳の上に無造作に転がった着物を適当に羽織って布団の隣に腰を下ろした。


穏やかな寝顔を見て、今なら僕でも殺せそうだと思った。


白い首に手を掛ける。


少しでも力を入れればすぐに折れそうだ。


そう考えたとき、Aの目蓋が震えて、慌てて手を離した。


とろんとした瞳が長い睫に縁取らて現れる。


「おはよう。体は平気?」


「...おはよう。大丈夫だよ」


まだ呂律の回っていない言葉。


クスリと笑ってまたAの額にキスを落とした。

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ピエリッタ(プロフ) - こおりさん» コメントありがとうございます!低評価なのはこの作品を上げた際、オリ/ジナルのタグを外し忘れたからだと思います💦挽回できるよう更新頑張りますね! (2022年7月26日 17時) (レス) id: 916fe9a51a (このIDを非表示/違反報告)
こおり - めちゃくちゃ面白いです!! 更新頑張ってください!楽しみにしてます!! なぜ低評価なのかが意味わかりません、、、。 (2022年7月26日 15時) (レス) @page9 id: 7142da3b96 (このIDを非表示/違反報告)
ピエリッタ(プロフ) - 舞さん» コメントありがとうございます!こんなに早くもらえるなんて...!ご期待に沿えるよう頑張ります! (2022年7月21日 8時) (レス) id: 916fe9a51a (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 更新頑張ってください^_^ (2022年7月20日 19時) (レス) @page5 id: 17ec247796 (このIDを非表示/違反報告)
ピエリッタ(プロフ) - あ、本当ですね!ご指摘ありがとうございます。もう一度ルールを確認しますね。失礼しました。 (2022年7月20日 17時) (レス) id: 916fe9a51a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピエリッタ | 作成日時:2022年7月20日 17時

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